8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

あ行の作家

稲田俊輔『おいしいものでできている』感想

稲田俊輔『おいしいものでできている』を読みました。 真っ青な表紙。食べものに関するエッセイなのに、一般的に食欲を減退すると言われている色を使うのが、まずは面白いなと思った。そして内容も面白かった。極端に何かを好きな人の過剰な語りを摂取するこ…

イ・ラン『悲しくてかっこいい人』感想

イ・ラン『悲しくてかっこいい人』を読みました。 中でも「もう少し演技しないと」というエッセイが好きだ、と読書ノートには書いている。もうエッセイの内容は忘れてしまったけど。本を読むというのは、瞬間的な体験?だなあと思う。つまり、読んでいるとき…

ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』感想

ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』を読みました。 隕石が落下するまでの七日間、大切な妹に会うために終わりの世界を奔走する男の物語。世界の終わりが顕わにする人々の本性。最後の終わり方がとても(とても)良かった。それはこの物語を読み…

恩田陸『メガロマニア』感想

恩田陸『メガロマニア』を読みました(2023年5月)。 中南米紀行エッセイである。写真が所々挟みこまれているのがいい。紀行文だけでなく、写真が時々挟まれるエッセイが(そして小説も)とても好きである。にこりとしてしまう。小見出しが短く区切られてい…

恩田陸『白の劇場』感想

恩田陸『白の劇場』を読みました(2023年5月)。 積読して2年、やっと読み終える。 恩田陸ほど様々なジャンルの作品を楽しそうに書く作家を知らない。嘘かも。でも本当に知らない。恩田さん自身は一人称複数の小説を書くのが得意とのこと、私はそれを読書ノ…

稲垣えみ子『寂しい生活』感想

稲垣えみ子『寂しい生活』を読みました。 電気は欲望を解放させるもの、というようなフレーズが印象的だった。私の考えでは、人間の欲望を今までは不自由さが抑えていたけれど、その歯止めが技術の進歩で一つ一つとクリアになっているという印象。じゃあ、不…

岡尾美代子『センスのABC』感想

岡尾美代子『センスのABC』を読みました。 スタイリストである著者のセンスにまつわるエッセイ。ファッションに疎いので、見知らぬ単語に出会うたびに調べながら読みました。楽しいね。 幼い私にとって「センスがいい」というのはそれは恐ろしい言葉だったの…

イ・ラン、いがらしみきお『何卒よろしくお願いいたします』感想

イ・ラン、いがらしみきおの『何卒よろしくお願いいたします』を読みました。 アーティストのイ・ランさんと漫画家のいがらしみきおさんの往復書簡。とても楽しく読みました。イ・ランさんのエッセイは以前から気になっており、これを機にいよいよ手を伸ばさ…

ポール・オースター『インヴィジブル』感想

ポール・オースターの『インヴィジブル』を読みました。 初めて読む作家。数ページ読んで、あ、この人が書く話好きかも…と思うに至る。 好きだと思える条件を言語化するのは難しいが、私の場合はさしずめ、 ディテールの描写にぐっとくる 淡白 突拍子もない…

小川洋子『遠慮深いうたた寝』感想

小川洋子さんの『遠慮深いうたた寝』を読みました。 この本はまず装丁が素晴らしい。書店に平積みになっていたときから密かに気になっていた本をようやく読むことができました。陶磁器を撮ったものを印刷した表紙、なのでしょうか。この表紙を開くときは、陶…

浅野いにお『漫画家入門』感想

浅野いにお『漫画家入門』を読みました。 面白かった。浅野さんの作品は『ソラニン』そしてデデデ(『デットデットデーモンズデデデデストラクション』)の途中まで読むという中途半端さであるが、NHKの「漫勉」で浅野いにお回を観てえらく印象に残っている…

鷲田清一、内田樹『大人のいない国』感想

鷲田清一、内田樹『大人のいない国』を読みました。 面白かった。「大人」という観点で、現代日本社会について考えてみたり、という本。この本で書かれていることは大体において「そうだよな」と首肯するところではあるが、細かい所を検証すれば「揚げ足取れ…

江國香織『東京タワー』(二回目)感想

江國香織の『東京タワー』を読みました。 再読。 dorian91.hateblo.jp 初めて読んだ時の自分の感想を読み直したら「おま、結構いいこと書いてるやん」となる。過去の私はもう他人だ。 私はこの小説を旅のお供に選んだ。理由としては、それが江國香織の作品で…

内田樹『日本習合論』感想

内田樹『日本習合論』を読みました。 私が「純血」という言葉と初めて出会ったのは、おそらくハリーポッターシリーズで、魔法使いの中には、魔法を持たない人間(マグル)から生まれた魔法使いを「穢れた血」として忌む人々たちが登場する。 当時、小学生だ…

江國香織『すいかの匂い』感想

江國香織『すいかの匂い』を読みました。 自分にはそういうものがあると認めたくないけれど、実際はあるでしょ? ということを突き付けられているような小説。江國香織作品の中ではつめたく、ちょっと不気味な感じがした。読んでいる最中、ずっとドキドキし…

恩田陸『黒と茶の幻想』感想

恩田陸『黒と茶の幻想』を読みました。 記録に残す限り4回ほど読んでいました(今回で5回目)、好きとか嫌いとかではなく、ただただ定期的に読む本『黒と茶の幻想』です。 繰り返し何度も読む本の醍醐味として、書かれている本の内容は変わらないのに読み手…

江國香織『落下する夕方』感想

江國香織『落下する夕方』を読みました。 梨果と八年一緒だった健吾が家を出た。それと入れかわるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。逃げることも、攻めることもできない寄妙な…

恩田陸『灰の劇場』感想(二回目)

恩田陸『灰の劇場』を再読しました。 読むのは2回目か3回目かぐらい。 大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ご…

恩田陸『蒲公英草紙 常野物語』感想

恩田陸『蒲公英草紙 常野物語』を読みました。 恩田陸の作品はかなり読んできたと自負しているけれど、この期に及んでまだ読んでいない作品があることを嬉しく思う。今回は常野物語シリーズより『蒲公英草紙 常野物語』を。 恩田作品を読んでて思うけれど、…

江國香織『神様のボート』感想

江國香織の『神様のボート』を読みました。 「好きな作家は」という質問は私を恐怖させるけれど、「○○という作家の好きなところは」という質問なら意気揚々と答えてしまうかもしれない。 恩田陸と江國香織で共通している好きなところは「だらだら読める」と…

江國香織『赤い長靴』感想(2回目)

江國香織の『赤い長靴』を読みました(2回目)。 この小説はホラー小説だとつくづく思う。私にはこの小説は少々過激すぎる。読むたびに気分が悪くなり、その感覚が忘れたころ、性懲り無く読むのだろう。 読みながら「愛の名のもとになんたら」という言葉が…

江國香織『がらくた』感想

江國香織の『がらくた』を読みました。 まず文庫本の表紙が最高。とっても好き。私は文庫本の表紙を気にしたことがないのだけれど(それもどうかと思うが…だってせっかくデザインをした人がいるのだから)この『がらくた』に関しては表紙にまず目を奪われた…

荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』感想

荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』を読みました。 ううむ。面白かった。ちゃんと面白かったのに今まで読んでいなかったのは一体なぜなのだろう。「すべてを読んだ」なんて大言壮語するつもりはないが(有名なファンタジーを網羅してるとも言い…

江國香織『ウエハースの椅子』感想

江國香織『ウエハースの椅子』を読みました。 冒頭で私はこの本のことを好きになった。 かつて、私は子供で、子供というものがおそらくみんなそうであるように、絶望していた。絶望は永遠の状態として、ただそこにあった。そもそものはじめから。 江國香織『…

江國香織『はだかんぼうたち』感想

江國香織『はだかんぼうたち』を読みました。 (私は単行本の方を読みましたが、文庫の表紙かわええ…。) さておき、読みました。着々と江國作品を読んでいっております。 『はだかんぼうたち』は比較的狭いコミュニティの人間関係がかなり複雑で、唐突に登…

恩田陸『スキマワラシ』感想

恩田陸『スキマワラシ』を読みました。 作中の季節が夏ってわけではないのだけれど、これは夏に読みたいなあ…と思わせる鮮やかな青と涼しげな少女の表紙が印象的。 気になって書店でぺらぺらとめくった時に抱いた印象はそれとして、読み進めるうちに少しずつ…

江國香織『東京タワー』感想

江國香織『東京タワー』を読みました。 開架で何度も見かけそのたびにぱらぱらとめくり結局棚に戻していたこの本を読もうと思ったのは、何度目かの立ち読みでたまたま読んだシーンがものすごく静かだったからだ。静かな小説を読みたかったので、丁度いいと思…

恩田陸『夢違』感想

恩田陸の『夢違』を読みました。 中学高校の時に読んだと記憶しています。久々に読んでみました。 「あれは何だったの?」 恩田陸作品を読んでいると、しばしぶち当たる難問です。 私は恩田陸作品が好きですが、その良さを、登場人物の聡明さとお喋り度の高…

江國香織『ホリー・ガーデン』感想

江國香織『ホリー・ガーデン』を再読しました。 今年の三月ぐらいに図書館で借りてもう一度読みたいなと思ったので文庫本で購入後、読み直しました。 一つひとつの章が短いので、一章読むごとに「ふう」と息を吐きだし、茶でも飲み、再び「よいしょ」と読み…

江國香織『彼女たちの場合は』感想

江國香織さんの『彼女たちの場合は』を読みました。 面白かったな~。なんだろう、特別何かが起こるわけではないのだけれど、常に何かが起こっている小説だなと思いました。もちろん起こった出来事から驚くべき出来事をピックアップすることはできるのだけれ…