「パスワードはひ・み・つ」風浜電子探偵団事件ノート①

 松原秀行さん作「パスワードはひ・み・つ」を読みました。 

 かれこれ10年以上前に読んだ作品だと思いますが、「大人」になって読む「パスワード」シリーズも相変わらず面白かった、今回はそういう話になるかと思います。

 

あらすじ

舞台は「風浜」という架空の都市。主人公は、小学校5年生のマコト、みずき、飛鳥、ダイ、そして最終的のこの巻のラストに仲間になったまどかの5人。彼らは小学校が同じではないけれど、ゆるやかな関係性を築いている。彼らがやりとりするようになったきっかけは「電子探偵団」というインターネット上にある「電子塾」の教室だった。この電子探偵団は、入団するときにテストがあり、そのテストに合格したものしか加入することが認められていない。そのテストの内容は、ミステリーが好きな小学生だからこそ解くことができるもの。なかなかミステリ好きの小学生はいないのか、今のところメンバーは4人(物語開始時)である。

「謎解きが好き」という共通点で集まった彼らは、インターネット上で謎解き合戦に日々明け暮れる。そして、次第に現実世界の謎を持ち寄ってお互い考え合う「電子探偵団」になっていくのだった...

 

 というようなお話です。

 

読みなおすきっかけは、些細な会話

 そもそも、なぜこの作品をもう一度読むことになったのかというと、知人との些細な会話からでした。同じ年代を過ごしてきたから共有できるものもある。その知人も本を読む人間ですが、お互いジャンルが違うこともあって、本好きなのに本の会話はあまりしなかった。ところが、ひょんななことから幼少期に読んでいた作品の話題になり、出てくる出てくる、懐かしいタイトルが。その中でも私が「うわわわわ~懐かしい~~~~」と唸ってしまったのが、この「パスワードシリーズ」なのでした。

 勢いは大切、ということですぐさま自治体の図書館で本を借り、読むことに。

 恥ずかしがる必要はないけれど、成人してから入る児童文学エリアは、少々負担でしたけれど(笑)棚の高さから貸し出しカウンターの高さから、当然扱われている本も、そのフロアにいる人たちも、まるで違う空間。親子連れで本を選んでいる方々もたくさんいて、大人がいること自体は不思議ではないけれど、こう、ね、借りるときはちょっと勇気がいりました。幼児教育とか学校に携わっている人なんかは、今でもよく行く場所なのでしょうか...。

 

今になって色々感じる「パスワードシリーズ」

昔のときめき

 冒頭でも言ったとおり、今でも読んで面白かったです。

 なぜ面白いかというと、1つは小さい頃に読んでいて感じていた「ツボ」のポイントが、今でも大して変わっていないこと。

 私は、小学校も違う同世代の人たちとインターネットを使って関係を築いていくところに、ある種の「珍しさ」「先端的」を感じていて、作品が生まれた当時から見てもだいぶ技術的にも進んだであろう現代を生きている今でさえ、その感想は健在なのでした。つまり、自分のパソコンを持てて気軽にこうしてブログに自分のことを書いていたとしても、コミュニティーを築くことは私にとって「珍しい」ことであり「憧れ」であり「恐れ」でもあるのです。自分は今もパソコンを持っていても、人々とつながることはできていないのだから。

 学校以外の別のコミュニティーが作られているところにも、今も憧れはあるし、当時「うわ~~~」と、ときめいていたポイントは今もときめくものなんだな、と読み返して気がつきました。

 

個性豊かなキャラクター像

 面白かったところはまだまだあって、登場人物たちのバリエーションが豊かで活き活きしているところもまた魅力的。それぞれは違う個性の持ち主なので、読んでいて飽きない。昔は「飛鳥」に気障なところを感じていて苦手なところがあったのだけど、裏を返せばすごく人間くさくて愛すべきキャラクターだな、と今は思えるようになりました。

 

無理にかっこいいことを言うのならば・・・

 私は、「面白くないなぁ~」と思いながら小学校中学校、そして高校以降も学校生活の大体を送ってきた人間でして。死にたくはないのだけど、生き続けるのもなんだか大変そうだ、ずっとこのまま「灰色」なのかしら、と思いながら鬱鬱としていて。だけどあの時まるで想像できなかった未来を、今、私は生きている。相変わらず面白くない人生ではあるけれど、少なくともそれは自分次第であり、今の私は少しでも面白く生きることができればいい、自分のペースで、とまで思えるようになった。かっこよく面白い人間にはなっていないけれど、それでも「死ななくて良かったな」とは思うのです。(「生きてて良かった」と強烈に思うこともないけれど。)

 

 昔に読んだ本は、そういった「記憶」を時に思い起こさせてくれるものでした。あの時「パスワードシリーズ」を私は熱心に読んでいて、今もこうしてその本を開いている。今夢中になっている本も、もしかしたらどこか遠くの未来で開いている自分がいるのかもしれない。いないのかもしれない。まるで想像できない未来なのは変わらないけれど、「もしかしたら…?」が想像できるようになったのは、今と昔で少し違うこと。

 

 たまには、昔夢中になっていた本を読むことも悪くはないですね。

 そんな取り留めもないことを考えておりました。

 

パスワードは、ひ・み・つ new(改訂版)-風浜電子探偵団事件ノート1- (講談社青い鳥文庫)