穂村弘『君がいない夜のごはん』感想

 穂村弘さんの食エッセイ『君がいない夜のごはん』を読みました。

 

 個人的な話をすると、これを書いている2017年は私的穂村さんYearである。穂村さんという人の本を知ったのが今年の初め。それから芋づる式に著作を漁る日々。文章が馴染みその人のスタンスもなんとなくわかるこのぐらいの頃が、とても楽しい。自分が「合う」作家さんとの出会いは、いつになっても楽しいものです。

 

 この本は装丁からぐぐぐっときます。私はこの本を本棚から引っ張ってきたので印象的な表紙をみたのは本を引っぱり出した後だけれど、この本は表紙を真正面にして多くの人に見てほしい。インパクトが強い本です。

 もう1つ装丁の話をすると、目次の並びとフォントがとても好きです。小さく横並びで書かれた目次。ああ、ぱっと見開いて一覧で見ることができるのか…いいなぁ。本文の内容はともかく「目次」を見ただけで手元に置きたいと思ってしまうなんて。こういうところがハードカバーの魅力だと思います。

 

 この本は穂村さんの「食べ物」エッセイ。食べ物エッセイと聞いてイメージするのは、「ごはんは大切だよね」とか「旅先でのご飯エピソード」とか「自炊してみました」とか、気合が入った文章を思い浮かべてしまうのですけれど(もちろんそういうエッセイも嫌いじゃない)穂村さんの場合、本当になんてことない話でほっとします。なんてことない日常のご飯の話なのに、穂村さんの見る世界が独特なのか切り口がすごいのか、文章力も相まってとてもユニークであります。電車で読んでいたけれど、ふふふ、と思わず笑ってしまう箇所が5本指じゃ足りない。両手を使っても足りない。そういうエッセイです。

 

 私がメモをしていた文章で、大いに頷いてしまうものだけ挙げて終わりにしよう。

 

 ホテルの朝御飯が好きだ。

 大きな窓から降り注ぐ陽射し、立ちのぼる湯気、静かに食器の触れ合う音、親密な話し声。いいなあ、と思う。

 

 ものすごく分かる。なんなら私はホテルで泊まることそのものが好きだ。どこにも旅行しなくていい。高いホテルじゃなくていい。さっぱりと無機質なホテルに泊まって何もせずにぼーっとしていたい。そして朝食はバイキングでもって柔らかな日差しの中モーニングコーヒースクランブルエッグとベーコンを食べるのだ。この組み合わせなら多分トーストなのだろうけれど、あいにく私はごはん党。

 

 人間は何かを食べないと生きていけないから、「食べ物に興味がない」というこだわり含めて人間の数だけ嗜好がありそうで、話は面白そう。そんなことを考えました。

 

 穂村弘さんの『君がいない夜のごはん』を読みました。

君がいない夜のごはん