8月2日の書庫

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恩田陸『終りなき夜に生れつく』感想

恩田陸さんの『終りなき夜に生れつく』を読みました。

終りなき夜に生れつく

 

 

学生時代から恩田作品のファンで、今回も楽しんで読むことができました。『夜の底は柔らかな幻』で出てきた人たちがたくさん出てくる物語です。

 

恩田作品を読んでいると、人物の特徴によってカテゴリー分けができるような気がしています。そこも含めて私は好きなのだけれど、基本的に恩田さんの書く物語の女性は非常に理知的で、思慮深く、群れずに自立している女性が多いと思う。そして彼女たちは自分たちがスタンダードでないことを知っているし、その上でどのように行動するかも弁えて慎重に行動しているし、もっと言うと冷ややかに自分が属していない世界を見つめているような気がするのだ。これってある種「感じが悪い」女性になるのだろうか。でも、私はそういう女性に好意的だし自分もそうありたいと思うのです。

作家は異なるのだけれど、辻村深月作品にもこういう女性が多く登場します。自分は女性社会に上手く馴染めていない。自分を放り出す社会を冷ややかな目で見ているし、「馬鹿にしている」と言ってもいいんじゃないか、というまなざしを向ける。はい、すごいわかります。基本的に私もそんな感じだから。これって、やっぱり感じが悪いことなのだろうか。

 

再三言っていることかもしれないけれど、恩田作品の登場人物たちは自分の世界を持っている、と私は思っています。想像力が豊かで、とても内省的。よく考える。この豊かな世界観に触れるのが醍醐味なので、その点この物語も面白かったです。とにかく登場人物たちが内なる心の声でしゃべっていますから。それにとても優秀な人が多いのも安定。

超能力を保有している人を「在色者」、能力を「イロ」と呼ぶのも見事。「途鎖」という架空の国のネーミングも見事だと思いました。こういう命名のセンスが私にとってはドストライクな気がします。

 

4篇の短編が収録されていますが、どの物語も「これから」を匂わす終わり方だなと思いました。実際、上にあげた長編に繋がっていくわけですが。戦いの始まり、激動の予感、嵐の前の静けさを感じさせる短編集です。

 

流れるように読んでしまって、自分のなかで何かが残っているわけではないのですが、それもまた魅力と言えば魅力。指貫、ナポリタン、ラムネ、自販機、レンガ、ジョギング、などなどなど。なんてことない単語がキーワードになっていたり、個人的に妙に印象に残ったな、ということを最後に書いて終わりにします。ナポリタンの描写がリアルでした。そうそう、ナポリタンってピーマンが入っていますよね。