8月2日の書庫

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羽海野チカ『3月のライオン 13』感想

羽海野チカさんの『3月のライオン 13』を読みました。

3月のライオン おでかけエコバッグ付き特装版 13 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

3月のライオンと言えば、漫画喫茶でさーっとすべて通読したものの、手元に置いてあるのは1~6巻、11,12巻という偏り具合なので、途中の物語は細かいところはごっそり抜け落ちております。ちくしょう、ちゃんと途中の巻も買っておくべきだった。そんなことを思った13巻でした。

というのも、宗谷名人がわからないのです。

13巻で印象的なところがありました。宗谷名人はあの場面で肩をバンと叩く。叩かれた人はふらつく。それを支えようと周りの人は手を差し伸べる。この流れ。宗谷名人は「将棋を指せ」と相手を鼓舞するために肩を叩いたのか。その後茫然としていたのは、肩を叩いた自分に対してではなくて、もうこのゲームを続けられない事態に驚いているのか。宗谷名人がわからない。

 

13巻は、物語が揺れる気配がしつつ波が静かに去り(主にあかりさん、林田先生、島田先生)個々の登場人物に着目した短いお話が続きました。

零のねえさんの話なんかは、たまらなく寂しくなりました。人には色々な事情があるものです。事情があるからといって、行いや吐いた言葉が許されるわけではないけれど。

 

3月のライオンに出てくる登場人物たちは、読んでいてとても愉快です。それぞれがそれぞれの哲学を持ち、それに沿って生きている。好みも戦略も喋り方も服装も異なり、それが認められている。その世界に、私はどうしようもなく憧れてるのだと、読みながら途中で気がつきました。私のいる世界もそうであったらいい。もっと面白い人がいて、お互い近づいたり離れたりしながら生きていけたらいい。なのに、くっつくか、絶対近づかないか、極端になってしまう。

 

3月のライオンは優しい物語だと思います。『ちはやふる』もそういう傾向があるけれど、個々の登場人物たちに焦点をおき、なんか嫌な人と思っていた人にも人生があることを教えてくれる。『ちはやふる』と違うのは、「絶対悪」と呼びたいくらい、天災のようなどうしようもない、太刀打ちできない、何かが時々やってくること、ぐらいか。いじめ事件の加害者の女の子と捨男はトラウマである。それでも、彼ら彼女らにも人生があることぐらいはわかるのだから(中身はわからない。どういう過程でそんな悪の天災みたいになったのかまでは明かされていないから)やっぱり3月のライオンは優しい物語である。

 

頑なだった零くんが、面白くなってきて、さてこの後物語はどう続いていくのか。

アニメ2期も楽しみですが、なかなかハードなところを取り上げるので、心して見なければ。

 

 

3月のライオン 13』を読み終わりました。