8月2日の書庫

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宮部みゆき『模倣犯 三』感想

宮部みゆきさんの『模倣犯 三』を読みました。

模倣犯3 (新潮文庫)

 

まずは、すごく悲しい。それに尽きます。

 

「悪は伝染する」

これは同じく宮部さんの小説である『ペテロの葬列』のドラマ、のキャッチコピーですが、まさにそれ。悪は伝染するのです。でも、これを「悪」というのは違うような気がする。不幸は伝染する。呪いは遺伝する。悲しい悲しい悪循環。それをまざまざと見せつけられた第三巻でした。

 

450ページ超に渡り、丁寧に3人を追います。がーっと一気に読んでしまったので細かいところを拾いきれていませんがごめんなさい、当分の間はもう一度読もうという気はおきません。それは「つまらない」とか「長いから」ではなく、読みごたえ、満足感が十二分にあるからです。とにかく丁寧に登場人物たちの心情を追います。丁寧に、丁寧に。宮部さんの文体は私はかなり読みやすいので、高速道路を飛ばすようにするする読むことができ、長さはあまり気になりませんでした。

 

圧倒的な文章力でもって表現するは、太刀打ちできない悪意(あれを「悪意」と呼んでいいのか、もはや「悪意」すらないのではないか)と不安と迷いと勇気です。

浩美を見ているともっと早くに誰かが彼を見つけられなかったのか、と思わざるをえません。いや、見つけた人はいたけれど彼以外は誰も浩美のことをちゃんと見ずに判断してしまったということだし、人をちゃんと見るというのはとても難しいことなのだなと思いました。

視覚障害をもっていたカズは見つけられ、心に傷を抱き闇を育ててしまった浩美は見つけてもらえなかった。どうすれば、私は見つけることができるのでしょうね。。。日々に流されずきちんと見ていくしかないのでしょうか。

 

また悪の連鎖についても考えさせられました。連鎖は自分で断ち切らなければなりません。ここで切らねば、後世まで続いてしまう。そういった意味では、自分にまったくの無関係なこと、他人事とは思わず生きていかねばなりません