高田大介さんの『図書館の魔女 第四巻』を再読しました。
何度読み返したかわからない。また全四巻ある図書館の魔女は、どこから読んでも面白い。そういう作品です。確実に私を作る物語です。この本に出会えてよかった。そう思います。
いよいよ最終巻。物語は終盤へと向かいます。
微妙なバランスを保って成り立っていた平和を、脅かすものがいる。マツリカの左腕を奪った敵がいる。この2つの脅威はおおもとを辿れば1点に行きつきます。海を越えて堂々と大陸に鎮座するニザマ。マツリカは自らニザマへと向かい自分の左手を取り戻し、来る動乱の日々を回避することができるのか。それが第四巻の内容です。
こうして書くと、マツリカという少女がいかに正義のヒーローなのか。世界の平和を取り戻そうと悪戦苦闘する素晴らしい人物なのかと受け取れかねないのですが、それは違います。
マツリカは正義のヒーローではありません。強大な勢力を誇る大国のあいだで日々繰り広げられる政略も、そこに道義を感じて介入しているわけではないのです。彼女にとって政局は将棋と同じ。特別冷淡な人間でもない代わりに、特別情に厚く、道徳心を持っている人間でもないのです。
なので、本文中も「何が何でも世界を救わねば」というような気負いがまるで無いのです。しかしいつの間にか世界を救っている。そういう物語だったのかもしれないなと、これを書きながら気がつきました。確かに喫緊の問題であった一の谷とアルデシュの大戦は回避できたわけですから、世界と人命を救ったことにはなるのに、大きなことをやり遂げたというカタルシスみたいなものはあまり描かれてなかったかもしれません。そこがいいんだよな…。
私は、第四巻でマツリカの片腕・軍師であるキリンがアルデシュのお歴々方を前にして秘めた覚悟を内省するシーンが好きです。
算術に長け、軍略に強いキリンにとって人命とはただの数字だったけれど、それが命を持った一人の人間に変化する過程にとても胸が熱くなりました。本当に、名文です。本当にキリンが感じているその通りだと思います。前線で戦う誰もが、誰かにとっての大切な人なんだということ。今の時代に生きる身としても考えさせられるものがあります。
そして、政略が単なるゲームのようなものだったマツリカも物語が進むにつれ変わっていきます。最後の数十ページはとても良かったですね。マツリカの覚悟が決まったことが良く描かれていました。
身体的には非力なマツリカが、言葉で世界を変えることができる物語です。
私は何度も何度もこの小説を読み返すことでしょう。そういう小説に出会えて本当に、本当に良かったです。
高田大介さんの『図書館の魔女 第四巻』を読み終わりました。