8月2日の書庫

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「きらきら」を抽出しながら生きていきたいか/『穂村弘の、こんなところで。』感想

穂村弘さんがインタビュアーとして様々なジャンルで活躍する人と対談する対談集『穂村弘の、こんなところで。』を読みました。

穂村弘の、こんなところで。

 

資生堂の「花椿」誌での連載対談、41人ものゲストとの対談ということで、1つひとつの分量は少なめ。個人的には「もっとその話聞かせて?」と思う内容ばかりで勿体ないなと思いました。そもそも雑誌に掲載されている対談なのであれば、1つあたりの分量はこれぐらいが妥当だと思いますが。

 

「はじめに」の部分で穂村さんが対談集刊行にあたりまとめた文章が印象的でした。一部を引用します。

子どもの頃から本を読むことが好きだったという穂村少年は、自然と何かを生み出す人に憧れるようになる。しかし様々なコンテンツをインプットすればするほど、自分自身のアウトプットからは遠のいていく。

どうすれば、何かを表現する側に行けるんだろう。言葉なんて使うだけなら誰でも使える。そこから自分だけの世界を生み出すには、どうすればいいのか。分からない。

だから、今回対談するにあたって一流の表現者の方々にお会いしたい際は、ぜひ率直に聞きたいと思っていたそうです。

若くして自分の道を見つけた人とお話するにあたって、何かを作ること、表現すること、その分野で戦うことの秘密について訊いてみたい、と思った。どうしてあなたはそうなれたんですか、という疑問を率直かつ具体的にぶつけてみたかった。

 

この後に穂村さんが気付いたことが語られる。私はそれを読んで「なるほど」と思いました。「普通からきらきらを抽出してゆく回路にある」だそうです。

 

私も「何者」かになりたい。表現者になりたい、と思っていたから、読んでいてちょっと悔しくなりました。だから心穏やかに読めないところもあったけれど、色々な人の色々な思考を知ることは楽しいです。だから私はエッセイが好きです。

 

「普通からきらきらを抽出する回路」は人それぞれ異なり、「きらきら」が素晴らしいものであるとその人はその道で食べていけるのではないかなと思います。ただ抽出すること自体はきっと誰もができることだし、私もできる。その道で食べていくかどうかとはまた別に、自分は「きらきら」を抽出しながら生きていきたいと思うのであればやってみたらいいんじゃないかな、と思いました。

 

読みながら魅かれた言葉の部分に付箋を貼っていたら、そこそこの量になってしまい消化するのが大変です。読む人によって刺さる言葉は違うと思いますが、きっと響く言葉が何かしらあるかと思います。

 

 

穂村弘の、こんなところで。』を読み終わりました。