8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

自分の足で立てやコラ/阿部智里『烏は主を選ばない』

阿部智里さんの『烏は主を選ばない』を読みました。

烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2 (文春文庫)

本屋さんにずらららっとシリーズ作品が積まれているのは知っていて、多分ファンタジーなんだろうなと思いながら今まで手が出せず、図書館の開架でたまたま見つけて手に取ったらめちゃめちゃ面白かった。そういう本です。

自分の中で爪痕がググっと残った本でなおかつ初めましての作家さんの場合は、作者近影をちらっと見るのは私の無意識の習性です。著者の阿部さんと私は大して年が違わず、ぞわっと鳥肌が立ってしまいました。う、羨ましい…。見苦しい感情であることはわかっているけれど。

本が好きなら「こんな風に本を書いて生活してみたい」と夢想することはまあ無い話ではないでしょう。私もそうです。だから、羨ましいなと率直に思ってしまいました。でも書かないと始まらなくて、書いているからこんな素敵な本を作れるんだなすごいなぁという気持ちです。

 

ファンタジー

上橋菜穂子さんの《守り人シリーズ》、小野不由美さんの《十二国記シリーズ》、最近だと高田大介さんの《図書館の魔女シリーズ》など良質なファンタジー小説がありますが、この八咫烏シリーズも独自の世界観の構築がなされていて夢中になります。ハリーポッターが私のファンタジーの原点ですが、「ここではないどこかの世界」の圧倒的再現性?というか構築力が私は大好きなんです。多少世界のつじつまがあってなくてもいい。「こんな世界もしかしたら…」「こんな世界あってほしいな」と読者に思わせられる世界を作れるってのが本当にすごいなと思うのです。そういうことができているファンタジー小説に出会えると嬉しくなってしまいます。

 

「主を選ぶ烏」ではなく「主を選ばない烏」

この『烏は主を選ばない』は謎が明かされる快感も魅力の1つなので、ぜひ何も知らない状態で読んでもらいたいのですが、私は「烏は主を選ばない」というタイトルの意味を読後考えています。烏はこの本の登場人物なら誰のことなんでしょうね。雪哉かな。違うかな。

この本を読んで感じたことは「他者に自分の幻想を投影するのではなく、自分の足で立てやコラ」でした。

 

面白かったです。初めてのシリーズで初めて手にした巻。他にも色々とあるのかと思うと楽しみがまた1つ増えました。

 

阿部智里さんの『烏は主を選ばない』を読み終わりました。