8月2日の書庫

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その容れものとどう向き合うか/角田光代『わたしの容れもの』感想

 角田光代さんの『わたしの容れもの』を読みました。

わたしの容れもの (幻冬舎文庫)

 

 私の容れもの(=体)がテーマなエッセイ集。するすると読むことができました。

 

私の容れものの変化と相対するとき

 とても興味深かったことは、筆者である角田さんの容れものに対するまなざしでした。年を重ねること、加齢に伴う体の変化に対して人間は無関心でいられない生き物だと私は思っているのですが、「無関心でいられない」結果どう反応するかは人に寄るようです。加齢に抗うか、加齢と距離を置くか(見ないふり?)、加齢に乗じるか、まあ、色々。

 角田さんの姿勢が面白かったのは、そのまなざしの根底には「好奇心」「驚き」があるからです。年をとることって誰にとっても初めての経験で、先駆者たちが経験しやがてはこの世から去っていくわけだけど、実体験としては今がリアルタイムで毎回か初めてだから、新鮮って気持ちはよくわかります。周囲の目を過剰に気にして年を重ねることを敵視してしまうこともありそうですが、角田さんにはそれがあまりないような印象を受けました。だから、面白いなと。

 私は年を重ねることをどう思っているのでしょう。特別嘆くことはないけれど、身体的なパフォーマンスの最高点を発揮できるピークは、もしかしたら過ぎてしまったのかもしれないなぁ…とは思います。例えば記憶力とか、例えば脚力とか。それは少し惜しいです。でも、どう抗っても衰えるものは衰えるわけで、「どうあがいても無理」という自然の厳しさを体の変化からひしひしと感じている…。人間思い通りにできることなんてそれほどないのだよ、という己の傲慢さを身近で戒めてくれるのが加齢ってもんなのかもしれません。それに、加齢=喜ばしくないこと、というのは人間の都合かなとも思うので、素敵に年をとりたいとは漠然と思ってます。生きることに必死でそれどころじゃないけれどな。

 

 私も好奇心を持ちながら、自分の容れものの変化と向き合っていきたいと思います。今必死で生きているんだから、別に過去を後悔する必要はないと思う。

 

 角田光代さんの『わたしの容れもの』を読み終わりました。