8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

米澤穂信『愚者のエンドロール』感想

 米澤穂信さんの『愚者のエンドロール』を読みました(何度目かわからない)。

 ※なおネタバレにも踏み込んだ感想となりますので、ご注意願います。できれば未読の人は読んでから先に進んで!!だって「知らない」状態ってすごくすごく貴重だもの。今後読むかわからないから~とかそういう気持ちなら、その可能性を潰さないためにもこのブログ読まないで!!ちなみに、この本は文量もそこまで多くなく読みやすいと思うので(これは個人差あると思うけれど)読んで!!

 「ブログ読むな!!」って初めて言ったな私(笑)でも本当にそう。ネタバレは「知ることで味わえる興奮」を味わう可能性を潰す行為だ…って最近思うようになったの。

愚者のエンドロール (角川文庫)

 古典部シリーズのファンなので、何度も読んだ作品ですがまた再読しました。シリーズの中でも『愚者のエンドロール』はそれほど読み重ねた記憶がなく、どちらかといえば「あっさりしているな」という印象でした。が、今ならわかる。『氷菓』と『愚者のエンドロール』はすごい。このコンパクトさでぎゅぎゅぎゅっと濃縮された甘酸っぱさ、恥辱、切なさ、やるせなさは読んでいて鳥肌が立ちます。

 

はしゃぐ折木

 久々に再読してまず思ったのが「折木よ…結構調子に乗ってんな」でした。それは「折木にしては」という前提があるわけで、慎重で常に石橋叩いて渡るような、そういう気の配り方を自分にしてしまう(自分で自分に課している)君にしては、随分と調子に乗ったし、はしゃいでいるなぁと。入須先輩の魔法にかかったのか。この折木が踊らされる過程をまだ丁寧に読むことができないですが、決め手になったのは「力あるものは己の才に自覚的になるべきだ云々」か…。それを踏まえて、きっぱりと「君には才能がある」と言われてしまったから折木は殻を脱ぐことにしたのか。

 入須さんの意地の悪さは多分何人もの人が指摘しているでしょうけれど、やっぱり意地悪ですね。「君には才能がある」と持ち上げておいて、折木は真相にはたどり着かない、自分が描いた脚本にとどまる演者に過ぎないだろう、と思っていたわけですから。意地悪い~~~~。辛辣~~~。

 はしゃぐ折木を笑える人なんてこの世にはいないと思うけれど、それでも折木はとっても嫌な思いをしたと思うのです。だから読んでいてしんどいなぁと思いました。別に折木はこの件で、こんな思いしなくてもよかった。これからこの先、どこかのタイミングで自分のペース(ペース?)、タイミングで己を恥じるのでも全然良かった。

 ただ、すごく良かったのは、最後の最後、学校のチャットルームでの千反田えるとのやりとり。きっと折木はあの後、古典部メンバーにも一部始終は話したのでしょう(どこまで伝えたかはわからないけれど)。入須に踊らされたことも。それも踏まえてのえるの折木弄りが見られて「ああ、ホータローは自分が味わった苦い汁の少しばかりを古典部と共有できたんだな」と嬉しかったのです。痛みを少しでも外に逃がすことができたのなら、それは喜ばしいことかなと。

 

 私がミステリー読みならまた違った感想になると思いますが、今回はここまで。でも綾辻行人さんの小説を読んだので、建築家のところはふふふっと笑ってしまいました。知っているとわかる小ネタ~。

 

 米澤穂信さんの『愚者のエンドロール』を読み終わりました。