恩田陸さんの『七月に流れる花』を読みました。(※以下ネタバレを含む内容なので閲覧にご注意ください。この本はネタバレ厳禁本です。ネタ知っちゃうと初読の楽しさ半減します)
ハードカバーと文庫本が出ていますが、絶対ハードカバー買うぞ、と心に決めた作品です(私はもっぱら図書館で本を借りて読むスタイルです)。絶対、中古じゃなくて新品で、買うぞ。
というのも、この本の装丁が素敵なのです。きちんとケースに入っていて、分厚い表紙。酒井駒子さんの繊細でドキッとする挿絵の美しさ。対となる『八月は冷たい城』と合わせて手に入れたい作り。
講談社ミステリーランドシリーズの作品なのですが、このシリーズ、小学生の頃に図書室から借りて読んだなぁ…と懐かしくなりました。そのころから「装丁がすごく素敵」「可愛い」と思ったっけ。私が読んだのは、有栖川有栖の『虹果村の秘密』と、はやみねかおるの『ぼくと未来屋の夏』だったか。話の筋は忘れてしまったけれど、何故か本そのものの可愛さとかそれを手に取ったときの喜びは覚えています。小学生くらいの時って本の内容を理解する以前に、「本を読める自分」に酔っていた年頃だったので。
本の内容だけでなく、装丁も素晴らしいというお話でした。
内容の感想に移ります。
なんて哀しい話なのでしょう
1ページ当たりの文字数はそこまで多くないし夢中になってしまったので1時間くらいで読めてしまう内容でしたが、ハラハラドキドキ、そして最後は予想以上に胸に迫ってくる悲しみがありました。これは好きだ。
何に心打たれたかというと、やっぱり佐藤蘇芳なのでしょう。
優等生で感情を完璧にコントロールする才女(中学一年生)。リーダーシップを自然と発揮し、周囲が取り乱しても彼女だけは絶対崩れることがない精神力の持ち主。その彼女が、あることをきっかけに感情を爆発させる瞬間、その様子をイメージしたら私はたまらなくなりました。
彼女自身毅然としていられたのは、他人のことを考え気を配るほうが「気が紛れるから」。意識を外に無理やり向けないと、彼女自身空虚さに襲われて身動きが取れなくなっちゃうのだろうなぁ…と思うとやるせないことこの上ないです。
近くにいるのに、見ることも会話することも叶わない。自分が今立っている地面の下には隔離病棟があって、そこには肉親がいて、死の淵を歩いていて、自分は何もすることができないという状況。しんどいと思います。
《夏流城(かなしろ)》から去ること=行動の制限からの開放=家族との別離。それって喜ばしいのか悲しいことなのかわからなくなります。多分どちらも正しい。本来なら人は自分のペースで悲しみを受け止める自由があると思うのだけれど、《夏流》という特別な地域ではそこがやや蔑ろにされているような気がしないでもない。
色々ごちゃごちゃしたことを考えて、ただ哀しい話だなと思いました。でも、悪くはない。時々読み返したい。そういう物語です。