恩田陸さんの『八月は冷たい城』を読みました。
こちらは『七月に流れる花』とセットで読みたい本です。順番も、七月→八月の順番に読むのが良いでしょう。その方が絶対良いです。
同じ設定(《夏流城》というお城に夏休みの間行かなければいけない)ではあるけれど、何を知っているかで見方がだいぶ変わるということを教えてくれる七月・八月シリーズです。しかし両者に共通しているのは「未知は怖い」ということ。両方とも得体のしれない存在、謎に怯える少女と少年が描かれていることは同じです。
『八月は冷たい城』で印象的だったのは、愛する存在を喪った時の痛みの描き方です。主人公である光彦(てるひこ)は、母を《緑色感冒》という病で亡くすわけだけれど、その時の感情が切ない。中学生で圧倒的な喪失の痛みを経験しないといけない。愛することの喜びや甘さを人間は何度も何度も取り上げてきて、誰かを喪うときの痛みも何度も何度も取り上げられてきたけれど、光彦のその瞬間は本当に読んでいて悲しかったです。そこの描写が私は好きだな。
《夏の人》が少年少女を見送るのも好きです。《夏の人》がどういう存在なのかわかった上で読むと、いいですね。
時々でもいいから読み返したい。そういう連作でした。読んでよかったです。
恩田陸さんの『八月は冷たい城』を読み終わりました。