8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

本多孝好『MISSING』感想

 本多孝好さんの『MISSING』を読みました。

MISSING (双葉文庫)

 

 すごく良かったです。読めて良かった。これがデビュー作ということですが、すごいなと思いました。既に「らしさ」みたいなものがあって差別化ができているし何より面白い。私は好きな小説です。

 

眠りの海

 一番ミステリーっぽいなと思いました。謎が解ける時の快感を味わえます。

 

祈灯

 私はこれが一番好きです。好き。幽霊ちゃんの人物像も妹の真由子も。人間の心の柔い部分をピンポイントで針でぶっ刺していくのがこの短編集に共通して言えるところかもしれませんが、「祈灯」が一番痛い。

 

蝉の証

 あああ~と思わず呻いてしまう終わり方でした。人間そこまで強くないんだ。それがよくわかる話でした。米澤穂信さんの小説を思い出しました。

 

瑠璃

 難しい。

 

彼の棲む場所

 こちらはチャレンジャーな話だなと思いました。サトウって本当に存在する人物だったのだろうか。

 

 どの話も主人公は別々の人物だと思うけれど、雰囲気が似ている。他者を拒まないようで、実は冷酷に締め出している。他者に寛容なのは他人に興味がないから。そんな感じ。でもそれが事実だとしたら、どうしようもないと思う。変えられるものもあれば変えることがひどく難しいこともある。主人公の生い立ちが分かる話もあれば分からない話もあるから一概には言えないけれど、冷めている人物が多いなぁそれは何故なのだろうなぁと私は思いました。

 「そんな人もいる」耐えがたい空白を抱えて生きている人が。難しいですけれど、何度か読んで理解を深めたい、そういう話でした。

 

 本多孝好さんの『MISSING』を読み終わりました。