8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

人生にはイベントが必要だ/津村紀久子『ディス・イズ・ザ・デイ』感想

 津村紀久子さんの『ディス・イズ・ザ・デイ』を読みました。

ディス・イズ・ザ・デイ

  いや~読んでいてとても楽しかったです。びっしりぎっちり中身が詰まっている本です。津村さんは段落をあまりつけず、1つの段落でぎっしり丁寧に記述される方なのか、あと何ページで1つの短編が終わる!と思っても、他の作家さんの1.5倍時間がかかる感じがしました(体感)。それは読みにくいのではなくて単純に1ページの文字量がちょっと多いんじゃないかな、わからないけれど。

 先にも書いたように読んでいてとても楽しいと思える小説でした。サッカーのJ2で戦うサッカーチームを応援する人々に焦点を当てた短編集なのですが、どの話にもたっぷり人生が詰まっている。彼ら彼女らのサッカーに対する思いも熱量も様々で、とてもサッカーに詳しい人もいればそうでない人もいる。でもスタジアムに足を運び、贔屓にしているサッカーグループがいて、その人の人生が最終的にはちょっと変わる。読みながら「あああ、ちょっとしんどい」と思える話だったとしても、この短編集をここまで読んできた経験上、最後には何かが変わっているんだ、だからそれを楽しみに読もう!そう思いながら1冊読み切ることができました。

 私はサッカーをまったく見ない人間なので、サッカーと人生が共にある人が見ている風景がよくわからないのですが、この小説を読みながら「なんだか楽しそうだな」と思うようにまでなりました。試合前のスタジアムの雰囲気、屋台、グッズ、勝ち負け、アディショナルタイム。サッカーを人生に取り込んでサッカーを楽しみながら、その頭の片隅で自分の人生についてちょっと考える。この「ちょっと」がいいのだろうなぁと思いました。サッカーを見る片手間で考えるぐらいが、人生について考えるエネルギー量としてはちょうどいいのかも。

 人生にはイベントが、気晴らしが、楽しみが、必要なんだ、人生をちょっと前向きに考えるためにも。そんな風にこの小説の感想を頭の中でまとめながら、今度近い場所で開催されているJ2の試合観に行こうかなと考えている自分がいました。いつか行ってみたいです。

 

 津村紀久子さんの『ディス・イズ・ザ・デイ』を読み終わりました。