8月2日の書庫

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とにかくあらゆる可能性を否定する/井上真偽『その可能性はすでに考えた』

 井上真偽さんの『その可能性はすでに考えた』を読みました。

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

 

 本来「探偵役」は犯行が実現可能であることを証明しようとする、と思います。あなたは一生懸命否定しますが、あなたは犯行を実現することができますね?と。しかし、本書に限っては違う。探偵ウエオロは「いくら考えても考えてもあなたに犯行はできなかった」ということを証明する。その切り口が新鮮な物語です。

 弁護士さんに似たスタンスか。ただ、その探偵は依頼人の為にあらゆる可能性を論破していくけれど、それだけじゃなく自分の利になるからってところが興味深いです。終始淡々と感情控えめで事件の話をしていく彼らの姿を見ると、知的ゲームに興じている隠居人みたいな、切迫感の無さも興味深いと言えるでしょうか。

 行きつく先、私は好きです。あらゆる可能性を排除する。そんなことできるのかなぁ…と思うのですが、この探偵さんはできるようです。

 

 井上真偽さんの『その可能性はすでに考えた』を読み終わりました。