8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

恩田陸『祝祭と予感』感想

 恩田陸さんの『祝祭と予感』を読みました。

 

祝祭と予感

祝祭と予感

 

 

 どこかで情報をゲットしてその場で「買う~~~~~~~~」と決めていた本。買いました。思えば『蜜蜂と遠雷』も書店に平積みになっているのをたまたま目にして内容も知らず、でも恩田陸さんだし最近本を買ってないし、「ええい買ってしまえ!」と買った結果鳥肌立ちまくり大満足な話だった、というオチでした。

 『蜜蜂と遠雷』というのは恩田陸作品の中でも独立しているなぁ…という感じで、今一番好きなのは『木曜組曲』や『黒と茶の幻想』『三月は紅の淵を』なんかなのですが、やっぱり異なる。自分の中の恩田陸作品の色のイメージが「暗緑色」とか「臙脂」であることからいっても、太陽の光を燦燦と浴びる『蜜蜂と遠雷』はやっぱり異色の作品だなぁと思います。

 今作は行間たっぷり、文字数も少なく、あっという間に読めてしまうのですが、無駄な文章がないというか「削がれている」という印象を受けました。『蜜蜂と遠雷』が言葉を尽くして「音」を表現しようとしていたのに対して、こちらはかなり説明っぽい。『蜜蜂と遠雷』で作られた各登場人物のイメージを、読み手の頭の中ですくすくと育ってしまった彼ら彼女らのイメージを、そのまま補強できるような、そういう話かと思います。

 一番好きなのは「鈴蘭と階段」であり、もうタイトルからして「好き…。」なのですが、ヴィオラへ転向した奏の新たな一面を、ドキッとさせられる一面を、見させてもらったなぁという気持ちです。正直、奏がどんな音楽家なのかが今一番知りたいです。

 世界は残酷だけど美しくもある。豊かなんだろうな、ってことを、この『蜜蜂と遠雷』『祝祭と予感』は教えてくれます。