知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』感想
知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』を読みました。
最近メディア化される作品が多いなぁと思う作家さん。初めて読みます。ドラマ『神酒クリニックで乾杯を』も同じ作家さんのシリーズものとか。
以下ネタバレです。
怪しいなぁ怪しいなぁと思ったところが案の定キーポイントとなっていました。
今回のポイントは「すり替え」ですが、ただ1つ難癖をつけるならば、研修医とはいえ患者を診る研修医にグリオブラストーマ(脳腫瘍の一種)と脳動脈瘤をすり替えて誤認させたまま診させるのは危険じゃない…?ってことでした。医療の知識があるわけではないので単なる感想ですが。碓氷先生はグリオブラストーマを患う「弓狩さん」だと思って診察していたら、実は脳動脈瘤を持つ別の人を1か月診てました、ってことになるわけだけど…。多分医療的なバックアップは他の医者(院長先生)とか看護師さんもしていたのだろうけれど。
そう考えるとすり替えトリックってのも興味深いかもしれません。情報はいくらでも改竄隠ぺいできますが、目の前の病状と肉体は切り離せないですもんね…そういう面白さはあるかも。
二十代でいつ爆発してもおかしくない爆弾を頭に抱えながら生きる人たちが登場する今作、自分が同じ立場だったら、という想像をどうしてもしてしまいます。だけどその想像は実感からは程遠く、想像と実感の距離はなかなか縮まらない。それでも想像することが必要かなと思いました。遅かれ早かれいつかは自分も通る道でしょう。いつか読み直したら、また異なる感想を持ちそうな話でした。