8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

恩田陸『EPITAPH東京』感想

 恩田陸さんの『EPITAPH東京』を読みました。

EPITAPH東京 (朝日文庫)

EPITAPH東京 (朝日文庫)

 

 

 「あーなんか読んだことがある気がする」「でもあんまり覚えてない感じもする」「読んだことがあるのか?」「でもオチはわからない」

 結果:3年前に読んでました

 

 エピタフ東京という東京の戯曲を書きあげようとする作家Kが東京をめぐって拾い上げる断片。東京オリンピックのくだりは不謹慎(不謹慎か?)だけど笑ってしまった。こちらの方が個人的には道理が通っている気がする。昔、週刊少年ジャンプで『魔人探偵脳噛ネウロ』って漫画が連載されていたのだけれど、唯一覚えているシーンがあって、それが理容室(か美容室)で髪を洗うために椅子に寝かされ顔にタオルを被せられたおじさんと、その傍らで特大鋏をじゃきりと掲げる理容師(か美容師)の2ショット。この構図は何もネウロからではなく昔からあるもんなのだなーということ、そしてKも同じようなことを考えていたこと。ついつい美容師さんというのは聞き上手な人もいるわけで、ついつい喋ってしまいがちだけれど案外怖い空間だなと思ったのでした。

 恩田陸作品の結節点というか、神原恵弥シリーズの異国の香りだったり(『ブラックベルベット』)、『蜜蜂と遠雷』のクラシックの気配、『中庭の出来事』の入れ子になった複雑な構成、都市伝説ものであったら『六番目の小夜子』や『球形の季節』その他恩田陸作品ならよく登場する雰囲気。

 結論、恩田陸らしい小説だなと思いました。楽しめながら読めました。