8月2日の書庫

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彩瀬まる『朝が来るまでそばにいる』感想

 彩瀬まるさんの『朝が来るまでそばにいる』を読みました。

朝が来るまでそばにいる

 

 不覚にも、最後の「かいぶつの名前」を読みながら泣いてしまった。

 どの話もそこはかとなく「死」が漂っていて、そうだな、ちょっと不思議。彩瀬さんこんな小説も書くのか。今まで読んできた感じをみると、初めに読んで今一番好きな『やがて海へと届く』は彩瀬さんのミックスって感じだ。

 彩瀬さんの小説の好きなところ、たくさんあるけれど、今回はその一つ「苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい」の煮詰めたところの描写が冴えわたっていたように思う。こういう感情、ある。どうやったって、足掻いたって、解消されなくて地べたにぺたんと座り込んで泣きたくなるような辛さが、ある。その辛さを解消しようとする心の働きさえ億劫になる辛さが。で、思うに、そういう辛さがあるんだよ、と。存在は認めておこうよ、ってのが私の思うところで、その辛さにスポットライトを当てている気がするのだ。つらいつらいつらい、でも傍から見るとこんな風に見える。ちょっと外からの視点を入れてあげるだけでも、ただ辛い、が変容する気がしていて、だから好き。