島本理生『君が降る日』感想
島本理生さんの『君が降る日』を読みました。
読後の余韻がすごい話でした。最後の短編『野ばら』がものすごく刺さったからかもしれないけれど、他に収録されている二編もとても良かった。
詳しく書くとネタバレになってしまうけれど、とある主人公のそばにいる人のこんな言葉が印象的。
あーあ。あなた、やっぱり大変な恋愛をする人だったね。
そうなのである。恋愛はただでさえ大変な(だと私は思っている)のにさらに大変な恋愛?をする人たちの話なのである。
特に表題作『君が降る日』で印象的だったのは、食べ物がよく登場すること。そして私は食べ物をきっちり書く物語を好きになる傾向がある。と思っていたら、食べ物がよく登場することは解説で角田光代さんが指摘されていた。ふふん。少し得意げな私。
料理が上手で食べ物を自然に生活に取り込んでいる矢部さんは多分「生」のイメージ。彼女が志保を明るい場所につなぎとめた、いわば「アンカー」的なものではないかなと感じました。
これは小説あるあるだけれど、読み手であるこの私の価値観とまったく同じの人間は絶対存在しないわけで、小説を読んでいるとどうしても「なぜ?」という部分が出てくる。どうして「そんな」人間を好きになるのか、とか、どうして伝えないのだ、とか。私だったらこう思う!が出てくるけれどそこが面白いところ。物語の流れに身を任せ、とにかく登場人物の歩みを信頼するしかない。結末が私の気に入らないものだとしても私がそれに文句をつける筋合いはない。その無力さというか、手の届かないもどかしさに浸りながら、同時に、本当の本当のところは私の人生に対しても文句をつけられる人間などいないのである、と思ったのでした。
谷川俊太郎さんの詩を久々に読んでみたいです。