8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

恩田陸『猫と針』感想

 恩田陸さんの『猫と針』を読みました。

猫と針

 

 演劇集団『キャラメルボックス』で上演した戯曲。えええい。あと10年私が先に生まれていたら多分見に行っただろうなぁ…惜しいことをした。

 本編も面白いのだけれど(相変わらずの恩田節)そのあとの日記がさらに面白かった。舞台直前まであがらない台本。書籍化もしていることだし無事に舞台は終わったのであろうけれど、このぎりぎりさは読んでいてドキドキしました。締め切りが迫るなか原稿が書けないってのは私は体験したことない状況だけれど、すごく苦しそうだ…。

 「人はその場にいない人の話をする話」。思えば恩田作品は結構この要素があったりする。『黒と茶の幻想』はここにはいない梶原憂理の存在が始まりから終わりまで欠けることがない。私も最近旧友と再会することがあったけれど、この場にいない人間の話をかなりしていた気がする(不在の人間性が強烈ってこともあるのだけれど)。ここにいない人の話って無責任になりがちで、だから楽しい。気を遣うけれど目の前にいる人間について言及するのとはやはりちょっと違う気遣いがそこにはあって。その場にいない人は、その場にいる人たちの連帯を強めるのだなぁと思いました。

 タカハシユウコの最後の独白も印象的。よくわかる。私は文章や写真にしないと落ち着かないタイプかも(だからブログも書いている)。

 薄いしあっという間に読める本です。まだ読んでいない恩田作品あるもんだな。