8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

本多孝好『dele3』感想

 本多孝好さんの『dele3』を読みました。

 

dele3 (角川文庫)

dele3 (角川文庫)

 

  dele2の続きがまさか紡がれるとは…。今回も面白かったです。

 

リターン・ジャーニー

 3つめの目を持ちデジタル世界を監視していると人々に敬意と畏怖を抱かれる「ミツメ」こと夏目直が登場。この夏目という人物、化け物と評される人間でして考えがぶっ飛んでいる。

 夏目曰く、人間は情報を食べて生きていて、ある情報を与えたとき人間がどう変わるのか知りたい、とのこと。わかる…とは思う。人間は情報であるということ。確かに生身の人間ではあるけれど、自分以外の他者にとって確かに私は私という人間の情報なのだと思う。SNSの網がここまで張り巡らされたらなおのことだし、実生活でもそうだ。で、夏目のすごいところは、自分も人間なのにまるで神にでもなったかのように高次の存在と無意識に位置づけて自分以外の人間を「観察対象」としてしまえることだ。私だったら、人間のことなんて考えても果てがないような気がしちゃうけれど…。それに法則性なんてあるのだろうか、とか。自身の関心を突き詰めることができる能力と興味の強さが夏目の怪物たる所以なのでしょう。

 

スタンド・アローン

 「リターン・ジャーニー」で展開された夏目の持論に対して、堂本ナナミが出した答え。堂本ナナミもまた圭や祐太郎、夏目や今回データの削除を依頼した唯という少女という「情報を発信する有機的な装置」の情報を受信して変身したのだと思います。

 

 あなたのようにはできなくても、私がいるべき場所で、目を凝らして、耳を澄ましてみます。私たちが、ただの有機的な装置じゃないことを証明するために

 

 かっこいいなぁ。ナナミはdele.LIFEは今自分がいるべき場所ではない、他に自分がいなければいけない場所があると思ったということ。ただの有機的な装置じゃないなら、では人間は何なのだろう。何なのだろうな。私はパッと答えられない。ただ言えるのは、人を予想するのは難しいということ。法則があるのかもしれない、人が反応するときのルールがあるのかもしれない。でも本当に色々な情報で構成されて、その中身を全部解析するのが困難である以上、人間の心の動きを完全に把握するのは難しいということ。夏目が圭に執着するのは何故か、夏目がどんなに誘ったところで圭は乗らないということ。人間は、全然面白い。