8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

村上春樹『カンガルー日和』感想

 村上春樹さんの『カンガルー日和』を読みました。

 

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

 

 

 長いので割愛しますが「100パーセントの女の子」の話をもう一度読みたくて買ったような気がします。「~ような気がします」というのは、この本がいつから私の本棚にあったのか記憶が無いからです。年末にわずかではありますが、手持ちの蔵書を整理して段ボールの奥に入っておりました。

 少しやけて茶色がかったページがそれはそれで愛おしく思える、電子書籍では味わえない「もの」としての本です。

 例の「100パーセントの女の子」の話は、いつだったか確かに教科書に載っていたと記憶していて、私はそれを読んだ覚えがあります。ではないとこの本を読もうとは思わなかったはずですから。特別感動したとかそういうことではないのですが。これが村上春樹さんの文体なのか…と思ったような気がしています。それから私はエッセイを一冊読んだきり、村上さんの著作とは縁がない人生でした。

 しかし、村上さんの文体は、そのたった一冊の本(と100パーセントの女の子の話)で痛烈に私の中に爪痕を残したように思います。文体ってなかなか説明するのは難しいのですが、なんというか、私は村上さんの文体をどうやら「好ましく」感じているようです。

 透明な読後感。この『カンガルー日和』を読み終わった後に感じたことです。さらっとした読後感だな、と。私にとっての村上春樹は、今のところそんな感じです。小説の主人公に共通する「内省的」という点も、この短編において、自己のアイデンティティについて言及したドロドロとしたものではなく、「どうしてなんだろう?」という外界に対するわからなさを出発点としているような気がしていて、それが「さらさら」の理由なのではないかと思います。よくわかりませんが。

 

 2018年は伊坂幸太郎、2019年は彩瀬まると江國香織、2020年は果たして村上春樹の年になるのでしょうか。(年単位で新たにハマる作家さんが現れるのです)