8月2日の書庫

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宮部みゆき『この世の春』感想

 宮部みゆきさんの『この世の春』を読みました。

 

この世の春(中) (新潮文庫)

この世の春(中) (新潮文庫)

  • 作者:宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 文庫
 
この世の春(上) (新潮文庫)

この世の春(上) (新潮文庫)

  • 作者:宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 文庫
 
この世の春(下) (新潮文庫)

この世の春(下) (新潮文庫)

  • 作者:宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 文庫
 

 

 圧倒的面白さ。というか先が気になって仕方がない引き込み力は流石の宮部先生。宮部さんの話は前提となる暮らしぶりや社会情勢を丁寧に描くのでそこがちょっと長い…と思う人もいるのかもしれないけれど、登場人物の心情や考え方につながる大切な部分を端折らないから説得力が増しますね。

 『荒神』を数か月前に読んだのですが、結構ばったばたと民の命が犠牲になり物語に登場して愛着が湧いた人たちが死ぬ様が惨かったのがトラウマだったのですが(『荒神』は面白いけれど惨い)この話では、良い人たちがきちんと生きてくれて嬉しかった。これって死ぬのでは…?と思いながら読んでいたので本当にドキドキしました。

 そして理不尽な悪とその狂気と毒々しさを描くのも本当に上手い。もうどうすりゃいいんだ…という理不尽なものに対して、宮部作品はそれでも悪に引き込まれないこと、善良であり続ける努力をすること、毅然とすることを教えてくれるような気がします。

 「名君か暴君か」というのは最初誰のことかわからなかったのですが、読み進めると「なるほど…」となりました。多分二通りの意味があるんですね。その謎に迫ろうとする話です。面白かった。