8月2日の書庫

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森博嗣「黒猫の三角」感想

森博嗣さんの「黒猫の三角」を読みました。

黒猫の三角 (講談社文庫)

 

森さんのGシリーズから始まり、瀬在丸紅子さんが主人公のVシリーズに手を出し始めました。他シリーズでも瀬在丸さんはお見掛けしていたので勝手にお年は40歳ぐらいかなと思っていたら、このシリーズ当時の年齢は30歳ほどだそうで。お若い。

 

Vシリーズの何が面白いのか。考えてみたのですが、事件でも謎解きでも登場人物のやりとりでもなく「瀬在丸紅子」という人物がその面白みの核なのだと思いました。とても気になる人物です。その思想も、没落した暮らしぶりも。

 

瀬在丸さんはこんなことを言っていました。

「殺したいか、それとも、個人を消したいか」紅子はすぐに答える。「殺人の動機は、この二種類しかない」

うわわわわ。とこの文章を読んで私は痺れました。確かにそうかもしれない。前者は「殺す」という行為そのものに意味があり、早い話、殺害する対象は誰でもいい。一方後者は個人を排除することが目的であり、「殺人」と言えばこちらの方がしっくりくる。なるほどね。

もっと言うと、後者に対しては「殺す以外の方法だってある」と言うことができるかもしれない。排除のための方法って何も殺害だけではないと思うのです。自分の中でその人を抹殺することもできるし、社会的な制裁を加えることもできるし、物理的に自分が離れることもできるし、誰かに相談することもできる。だけど、あえて「殺す」ことを選択する。手っ取り早いから。対して前者の理由で殺す人に対しては「殺す以外の方法がある」なんて提言は無意味でしかない。こちらとしてできることと言えば、そんな衝動というか欲望を持つ人なのかどうか、日々自分の周囲にいる人を観察し自衛していく他ないのではないか。でも、そういう欲望を持つ人には頭がいい人も多いと聞くので難しいのだろうなぁ…。

 

他に気になることと言えば、瀬在丸紅子さんの暮らしぶりと愛息へっくんとの関係でしょうか。なかなか厳しい暮らしぶりのようですが、優雅に生きていらっしゃるようだったので気になりました。どうやって生計を立てられているのだろう。またへっくんのフルネームも気になる。作中ではまだ明らかになっていない。なかなかあだ名として「へっくん」というのは珍しいような気もして。へっくんは大人びていて賢い男の子なのか、言動がクールだし、なんとなく紅子さんに冷たいような気がするのは、気のせいか。瀬在丸さんの家族風景が読み取れないのは仕方のないことなのかな。これからのお楽しみか。

 

ということで、楽しく詠むことができました。

真相は驚いた。冷静に考えればおかしなことはないのだけれど、つい誘導されてしまったな。

 

森博嗣さんの「黒猫の三角」を読み終わりました。