8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

芸術と人の交差点/原田マハ『モダン』感想

原田マハさんの『モダン』を読みました。

モダン

 内容の感想に入る前に。

原田マハさんはいくつか著作を読んでいて、例えば『楽園のカンヴァス』も読んでいます。原田さんは作家ながらキュレーターでもあるようで、ご自身の独自の経験を踏まえた「芸術」に特化した小説をある種のリアリティをもって描くことができる作家さんだな、と思っていました。一言で言うと、原田さんの小説を読んで、ほんの少しだけ芸術に興味が持てたのです。

それでも「えー芸術ってわかんない」と言っていた私が、今日この文章を書いている日に「ルーブル美術館展」に行ってきたんです。それは数日前に読み終わった『モダン』が後押ししてくれました。ルーブル美術館展行ってよかったなぁ…。趣味の1つに美術館めぐりを加えたい、今日この頃。

 

ということで、『モダン』の感想に入ります。

 

『モダン』はMoMAニューヨーク近代美術館)で芸術と関わる人たちをえがいた短編集です。短い話が5編入っているので、読みやすい本ではないかと思います。

これはきっとMoMAそのものを表しているのだと思いますが、5編の物語で中心になる芸術作品は何も絵画や彫刻だけではなくて、MoMAが扱っている(のだと思う)工業デザインなども登場していたのが面白かったです。

『楽園のカンヴァス』では1つの作品をとことん追求する物語だったと思いますが、そうだそうだ、芸術って色々あるのだ。そして「色々」が存在するのがMoMAなのだ、と私は思いました。MoMAは近現代美術に特化した美術館なのですね。

 

今日、実際に絵や彫刻を見てきた勢いでこの文章を書いていますが、あの「美術館」という建物、空間の中で、堂々と存在している芸術作品を、生で見る。体感したのでよくわかったのですが、芸術作品を前にして逃げることができない、向き合うしかない。そういうパワーが一流の作品にはあるみたいです。

何が言いたいって、芸術作品が人の人生を変えるなんてこと、全然、ある。

『モダン』を読みながら最後まで共感?できなかったのは、芸術にはそれほど大きな力があるのだということでしたが、今日よくわかりました。芸術はすごいです。

 

『モダン』で一番好きなところは、ニューヨークで生きる人たちの生活の一部が垣間見えるところです(本当は芸術と人との出会いを好きであるべきなのでしょうけれど)。

最後の短編「あえてよかった」の主人公(一時的にMoMAに来ている)は、通勤途中に歩きながらドーナツとコーヒーを買い、それを喉に流し込む。1日の始まりをそうして過ごすわけですが、私はそのシーンがとても好きです。観光したいとは思わないけれど、ニューヨークに本当にドーナツとコーヒーが存在していて働く人が朝どうやって過ごしているか知るためだけにアメリカ・ニューヨークに行ってみたい、とまで思いました。なんだかんだ、私は私以外の人間がどう生きているのか知りたいようです。

 

感想はこれぐらいです。

本を読んでまた世界が広がりました。小説はなんでもできますね。本を読むことが特別好きなわけではなく、単純に習慣になってしまっているだけですが、本を読んで良かったなぁ…と思いました。

読みやすい本なので興味があればぜひ。

 

原田マハさんの『モダン』を読み終わりました。