8月2日の書庫

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言語化/永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』感想

永田カビさんの『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』を再読しました。

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

 

再読しました。

私は普段ブックカバーをかけない派の人間ですが、この本を電車で読むのは色々な意味できつかった。流石に表紙は外して周囲の人の視線を気にしながら読みました。べ、別に疚しい本じゃないんだからね。で、でも誤解されると嫌だから、さ(誤解って何の誤解だ何も恥じる必要はない)。

 

この漫画。なかなかタイトルから表紙から衝撃的な作品だと思いますが、「さびしすぎてレズ風俗にいきましたレポ」というタイトルにかかるアクセントの位置が、きっと初見と読み終わった後では変わると思います。強調すべきは「レズ風俗にいってきた」じゃなくて「さびしすぎて」のところだと思っています。「レズ風俗にいってきた」部分も大切なのですが、そこに至る過程をぜひ読んでいただきたいものです。

 

言語化

このレポで私がとても感動したのは、筆者である永田さんが自身の状況を言語化していく過程です。永田さんは作中うつと摂食障害を患っている様子を描いていて、その内容はよくまとまっておられる。私は幸いにもどちらにもなじみがなく、特に摂食障害についても「ええええ」と息をのむばかり。食べたいという衝動に支配されてしまう様がものすごく印象的でした。かじりかけのこんにゃくとか、お湯で戻す時間が待てないくらいの衝動故かぶりついて血に濡れた乾麺とか(カップ麺の乾麺は固くてがちゃがちゃだからそのままかぶりつくと口の中を切ってしまうのですね)。

漫画エッセイにするのできっと何度も人の目を通して世に生まれた作品だからというのはありますが、冗長的な部分が無くて、それはつまり経験を自分の中で上手く整理しておかなければできないことなのです。これが良かった。自分のことって自分が思っている以上に客観視できないものだから、永田さんが冷静にご自身の感情を分析されているのが本当にすごいと思いました。

この苦しさが何から来るのか、そして解決するヒントが知りたい

(永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』より)

治療の結果文章を読むことができるようになった永田さんは、こういう思いで本を読むことがあったようです。すごい~。そしてここで得た知識と自身の経験から分析して、「レズ風俗」にたどり着くのですが、ほえ~。すごい(2回目)。自身の分析が正解なのかはどうでもよくて、きっと行動を起こせたことが何より大事なのだろうなと思いました。

 

なんでしょう。自分の感情や自分を取り巻く環境を冷静に言葉にしていくことのすごさを感じました。すごいものを読んだという気分です。

と同時に誰かの血の通った話を読むのは、生々しいので傷もぐっさり刺さるものがありますが、それ以上に面白いです。ここに書かれていることは本当のことだ。ここから何か見つけられるものがあるという確かさが良いですね。

 

すごかったです。ぜひ永田さんの内省の様子は読んでほしいなぁ…生きづらい人全般にもお勧めしたい。

永田カビさんの『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』を読みました。