8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

阿部智里『発現』感想

 阿部智里さんの『発現』を読みました。

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ふへへへへへ。図書館の本じゃないですよ。

  

 色々あって、阿部先生のサイン入り本です。嬉しいいいいいいいい。

 丁寧に丁寧に、それでも夢中であっという間に読んでしまいました。

 

 

装丁が素敵

 やっぱり新しい本を手に入れると、装丁も楽しみたくなりますね。うっとりしちゃう。白地に真っ赤に咲き誇るは物語上でも重要なアイテムである「彼岸花」。「発現」というタイトルのフォントはどういうフォントだろう。こう、白の表紙の奥底から、じわっと染み出たような印象を受けるのは気のせいじゃないはず。そう「発現」する話なのです。このタイトルも私は好き。発現、なんです。

 表紙を外すと、真っ赤な本体。やはり金で塗られた彼岸花はここでも登場。白と赤。印象的な表紙です。

 

私は「幽霊」が嫌い

 物語の本筋ではないのだけど、読みながら、「幽霊」嫌いだなーと思いました。

 「幽霊」にも様々な種類があると思うのですが、生きている無関係な人間を驚かせたり怖がらせる「幽霊」は理不尽で好きじゃないなと。生前どんな理由があったのか、未練があるのか、生きている人間が羨ましいのか知らないけれど、こちとら迷惑なんです!何にもできないし!という苛立ち。私怨で特定の人間を怖がらせたりするのはまだわかるのですが、本当に関係ない人にはね、、、幽霊さん自重して。

 ということで、到底自分では対処できないこと、関係あるのかもしれないけれどどうしようもないこと、それらが自分に降りかかってくるのは私、結構イラっとします。自分で対処できること、自分に責任があることについては手を尽くして対応したいけれど…。身勝手ですか。

 だからこの「発現」というのも、読みながらちょっとばかりぷんすかと怒ってしまいました。本当に、本当に怒るべきなのは愚かにも戦を繰り返してしまう「人間」というものであり、それはブーメランで自分にも跳ね返ってくる問題ではありますが。それでもさつきやさつきの兄、そしておそらくその娘ちゃんにも「発現」することでしょうから、彼ら彼女らには関係ないやん!と思うと怒りたくなってしまいます。戦を憎むしかないのか。それで何が解決するというのか。

 

麻婆豆腐

 なれそめは、真っ赤に煮えたぎる麻婆豆腐だった。

 (阿部智里『発現』)

  この文章が好きです。

 そう、彼ら彼女らの日常には、こうした大したことないけれどかけがえのない思い出があったはずなんだ。それをめちゃくちゃにした「何か」(もう何が根本なのかわからなくなってしまったから「何か」とだけ言う!)を許せない気持ちであります。お母さん可愛い。私でも惚れちゃう。

 

 最低最悪の悪人が出てくるわけでもなく、むしろみんな真面目で良い人だったからこその悲劇。でも善良で真面目だからこそ、きっと手を取り合って問題に対処できるはず。だから、さつきは、どうか絶望しないでほしいな。と言うのは、簡単なことなんでしょう。悲しいな。

 

 

 阿部智里さんの『発現』を読み終わりました。