8月2日の書庫

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彩瀬まる『眠れない夜は体を脱いで』感想

 彩瀬まるさんの『眠れない夜は体を脱いで』を読みました。

 

眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

 

 

 短編集。『桜の下で待っている』のような、それぞれがちょっとずつ繋がっているような繋がっていないような、そういう作品です。

 「眠れない夜は体を脱いで」。そのタイトルから色々なものを想像しますが、読み終えてみると「鮮やかな熱病」のイメージから「蛇のように脱皮すること」が私の頭の中ではむくむくと膨らんでいます。「脱皮」とは価値観の更新であり、5編の物語どれも、ちょっとだけ登場人物の価値観が更新されているのではないかなぁと思ったのです。それを読む私たちも然り。

 特に「へ~」と思ったのは「真夜中のストーリー」。ネットゲームで操作している女性キャラクターの身だしなみをどんどん整えていくうちに、男の目線で見ていた世界がちょっと変わる。思わぬ発見がある。へー、そんなこともあるのか、あるのかもしれないな、と驚いたというか新鮮でした。身につけるもので内面が変化するのはよくわかりますが、そういう心境の変化もあるのかと。

 

 彩瀬さんのなんてことない食事のシーンが、私はとても好きです。今年は彩瀬さんの小説をたくさん読めて嬉しいです。既刊は読みつくしちゃう勢いでこれからも読んでいきたいです。