8月2日の書庫

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阿部智里『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』感想

 阿部智里さんの『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』を読みました。

 

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

 

 

 読みたかった本がようやく!八咫烏シリーズのスピンオフ的な短編集です。どの話も胸に迫るお話しだったけれど特に好きなのは「まつばちりて」と「ふゆきにおもう」。松韻さんは、確かどこかで登場したのだと思うけれど(『烏に単は似合わない』かな)いい印象ではなかった気がする。それは視点が雪哉(若宮)目線であるからであって、対立する大紫の御前サイドの人間は怪しくて不信感を抱いてしまっていたわけだけれど、そういうちょっといけ好かない、怪しい、信頼できない人たちにもエピソードはあるってことは弁えないとなと思いました。これは本を読むときに限らず人生のあらゆる場面において。

 あとは聡明な人の聡明っぷりがきちんと描かれているのが好きです。雪哉の育ての母である梓さんとか。合理的な雪哉が故郷を守るということについてちょっと拘るところ、どうしてなのかな、まあわかるけれど、と思っていたけれど、梓さんの雪哉の母としての思いを読んでしまうと、このお母さんに愛情たっぷり厳しく育てられたんだな、母と兄弟が好きなんだろうな(お父様はちょっと保留)としっくりきました。

 八咫烏シリーズは一旦区切りがついたところで物語は第二章へと続くのでしょうか。わかりませんが、ゆるゆる楽しみに気長に待ちたいと思います。