マーセル・セローさんの『極北』を読みました。
Twitterのタイムラインで見つけてからずっと読みたかった作品でした。ようやく読むことができました。いや~良かった。昨今の世界情勢とも妙にリンクしてしまうというか、とにかく引き込まれてしまい無我夢中で読んでしまいました。
これはあまり内容を知らずに読んだ方が面白いと思うので語りたくはないのですが、一方でこの物語を読んでどの部分が印象に残ったか誰かと語り合いたいという欲求にも襲われます。色々なことがあり人が極端に少なくなって町がまったく機能していない極北(シベリアの方か?)で生きる一人の人間の物語なのですが、寂しいけれど寂しくないのです。主人公であるメイクピースという人間の思考が絶えずスッと頭に流れ込んでくる。一人の人間の果てがない内省。人がいようがいまいが、何かを考えるという点であまり関係がないのかなと思います。だから物語を読んであまり寂しさは感じませんでした。しかしそれはあくまで思考の話であって、メイクピースが見る世界を画像として頭の中で絵にしてしまうと、さて、正気を保つことはできるのでしょうか。わからない。私は自信がありません。
世界があのようになったことでその後生きる人の何かが壊れてしまった。倫理観?明日への希望?しかし生命は維持されている。食べるし排泄するし欲望する。そして人らしさを形作っている要素として、世界が壊れる前にその人が信仰していたもの、拠りどころとしていたものはあるのかなと思いました。メイクピースに残っているのは、手と足を動かして得た知識か。私だったら何が残っているだろう。そう考えた途端、無性に世界のことを知りたくなりました。もっと、感覚をひらきたい。
ということで、この本は図書館本なのですが時機を見て買わないといけないなと思いました。