8月2日の書庫

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恩田陸『まひるの月を追いかけて』感想

 恩田陸さんの『まひるの月を追いかけて』を読みました。

まひるの月を追いかけて (文春文庫)

まひるの月を追いかけて (文春文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2007/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

 『夜のピクニック』『黒と茶の幻想』『三月は深き紅の淵を』のような旅もの。奈良ときましたか。この小説を読んで奈良に行きたくなってしまいました。旅行に行けるようになったら奈良に行きたいです。各章ごとにどんでん返しというか「えええ!」と驚くネタが用意されていて、ページをめくる手を止めることができませんでした。今回のまとめ方、好きだ。

 ストーリーだけでなく、この小説は「歩く」ということについて考えさせられます。『夜のピクニック』『黒と茶の幻想』もとにかくよく歩く話ですが、それぞれ「学生生活最後の」とか「森の中を」とか付随する要素があって、それらと歩く行為の化学反応が面白いと思っています。この『まひるの月を追いかけて』は「斜めの関係と」という要素がありますが、『夜の~』や『黒と~』よりも、なんというか私にとっては身近なことです。旅行にも行くし、歩くことも好きだから。

 歩いていると思うのですが、体力に自信があるなしに関わらず、歩く行為ってほんのりと疲れる気がします。私は歩いていると良い意味で色々なことがどうでもよくなります。体がほんのりと疲れて、くよくよ考えても仕方ないことについて考えるのが面倒になります。それが良いことなのかはわかりません。しかし、少しだけスッキリして体に蓄積した淀みが解消されているような気がします。

 この小説ではとにかく歩きます。歩きながら静を取り巻く状況は変わっていくと同時に、彼女の考えも流れるように変わっていきます。とても自然に流れていくさまが良いと思います。この小説は動いている話なのです。

 

 恩田陸作品は、細かい些細なこだわりの描写が好きだなーと思います。この場合だとコーヒー&煙草中毒と童話収集、でしょうか。手紙や日記など紙に書くということも残っているのがいい。