8月2日の書庫

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アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』感想

 アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』を読みました。

 

  2020年下半期はクリスティーを読んでいくことになりそうです。だって面白いんですもん。ミステリーとして真相が明らかになっていくのも面白いですけれど、人間への眼差しに何かクリスティーらしさみたいなものを感じます。それが具体的に何かというと言葉にできませんが。

 ということで、クリスティー2作目は2018年に三谷幸喜がドラマ化したことでもおぼえがある『アクロイド殺し』。これはネタを知っている状態で読むことになりました。それでも面白く読めてしまうのだからすごいです。

 印象に残ったのは、名探偵ポアロという人物についてです。ポアロがどんな人なのかというよりは、どうしてポアロは名探偵足りえるのか、ということです。

 以前もちらっと考えたことがあるのですが、探偵が探偵足りえる条件って何なのでしょう。私はそれを以下のようにまとめました。

  1. 細かい部分を蔑ろにしない
  2. あらゆる可能性を検討する
  3. バラバラになった要素をつなげる力がある
  4. 知識がある
  5. 視野が広い

 刑事は探偵ではないのか。探偵ではないのでしょう。それは職務上の信念が別にあるからです。「悪いことをした人間は捕まえて然るべき場所で裁かれねばならない」。探偵というのは先に挙げた5つの要素を満たし、なおかつ、「謎」に対する好奇心がある程度あるということなのだと思います。ジェイムズ医師の姉、キャロラインは好奇心旺盛な女性だとは思いますが、5つのうち何かは欠けているのかもしれないです。

 こうやって考えると、サスペンスドラマで温泉旅館の若女将や新聞記者や法医学教室の先生や万引きGメンや、その他さまざまな職業の人も探偵となりえるという気がします。

 あと、探偵の描写がいつも世間一般的に考えてどうにも風変わりな人、とされているのも興味深いです。いたって普通の常識的な探偵というのはありえないのでしょうか。やっぱり異常なまでの好奇心や巻き込まれ体質が必要なのでしょうか。

 

 探偵とは何か、ということとは別で、この物語は登場人物たちがそれぞれ秘密を持っていて、じっくりとそれが章ごとに明らかになっていく構成が面白かったです。クリスティーのミステリーは、結構人間ドラマなんだなぁと思いました(今まで読んだことがなかったので)。