8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

多和田葉子『地球にちりばめられて』感想

 多和田葉子さんの『地球にちりばめられて』を読みました。

 

地球にちりばめられて

 実は先に、続刊『星に仄めかされて』を読んでしまいました。といっても登場人物たちは前作から通じて登場しているものの読みながらなんとなく事情はわかるし、『地球にちりばめられて』を読んでいなくても問題は無いです。

 今年から多和田さんの著作を読み始めましたが、いや~~~正直難しい。読みにくいとはまた違う感覚。どうもストレートに文章を読んでしまいがちで、多和田さんの個性であり魅力でもある表現に染まり切れないところがモヤモヤしつつ、しかし読んでしまう。面白いので。こういう表現方法があるのか…と驚きっぱなしです。

 私が好きだなと思ったところは、後半でHirukoがやっとのことで自分の母語を共有できる相手Susanooに出会ったところ。彼女の口から溢れんばかりに迸る言葉たち。もはやそれは、相手に共感してもらいたいとか肯定してもらいたいとか情報交換したいとか、私が普段行うコミュニケーションとは別物で、ただ喋っている、この言葉の意味がわかるだろうという確信を込めて球を思いっきり投げられる、その気持ちよさが前面に出てた。疾走感たるや。そうか、会話は言葉のキャッチボール、という例えがしっくりきた場面でした。母語を共有できないということは、自分の得意なフォームで思いっきりボールを投げることができないということになるのかなぁ…わからんな。

 でも自分が慣れ親しんだ言葉から離れて、言語の壁を越えて旅をしていく人々の姿も描いている。面白い。

 

 僕はハマチという名の魚に目を付けた。ハウマッチみたいで面白い名前。(p.24)

 これが多和田さんの表現。とても面白い。