8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

テッド・チャン『息吹』感想

 テッド・チャン『息吹』を読みました。

息吹

 

 SFというのはあまり読まない。敬遠している。ただこの本はSFを知らない私でも有名な本だということを知っていたから手に取ってみた。さてどうだったか。

 難しかった。SFというのは、哲学的問いを投げかけてくるジャンルなのだなと思った。なんというか、未来の昔話、という感じ。現代でも受け継がれている昔話の中には教訓的な啓蒙的な性質を帯びるものも多いと思っていて、SFは未来の、ありえない設定を使った昔話っぽい。でも昔話ではない。別に人々を正しい知識に導きたいわけじゃなくて「これってどうですか?」「こんなこともありますよね?」という問いかけをしてくるのだ。その辺りが私は難しいと感じてしまった。「そんなこと言われてもわからんのですよー」という風に。

 印象的だった話がいくつかあるが中でも最後の『不安は自由のめまい』はこの短編集の最後であるがゆえに印象もひときわ強い。

 プリズムという機械が発明された世界。「平行未来を知ることができたら」という仮定を元に展開されていく物語。そこで「知ることなんてできないじゃないですか」とちゃぶ台をひっくり返してはいけないのだ。SF、我慢し喜んで相手の話に乗らねばならない。私だったら興味はないと思う。平行未来を知ったところで、この世界の私で生きていくしかないのだから。以上、終了。物語が広がりません。

 

 もう少しSFを知りたくなったので、テッド・チャンの別の作品も読んでみることにした。2021年、SFの年になるか。