8月2日の書庫

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太宰治『斜陽』感想

 太宰治の『斜陽』を読みました。

斜陽

 

 太宰治は『人間失格』に次いで二冊目。いつも芥川龍之介と混同している。でも芥川と太宰って作風もテーマも違うのねと段々気づき始めている。

 この小説で「斜陽族」という言葉が生まれたほど。意味としては「急激な社会変動の為に没落の憂き目を見た上流階級」とのこと。

 

苛烈

 2021年に読んでも痺れるとはどういうことだ。主人公・かず子は売れない作家上原に恋をし、何通か彼に手紙を送る。その内容がま~~~~~~~~~~~~刺激的でぞくぞくする。やばいもんを読んでしまった、という感覚がすごい。名言のオンパレード。魂の叫び。かず子の視点で綴られる物語は全体として穏やかなものだけれど、この手紙パートは落差がすごい。

 

 かず子たち一家は爵位を持ってはいるようだけれど金銭的に苦慮していて、作中で長年暮らしてきた家を手放し、服や装飾品を始末。一言で言えば「生活能力がない」という事実が、じわじわと毒のように広がっていき、真綿で首を絞められている感覚です。

 

 人間って濃厚で面白い。そんなことを思いました。