8月2日の書庫

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鈴木大介・鈴木匡子『壊れた脳と生きる: 高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』感想

 鈴木大介・鈴木匡子『壊れた脳と生きる: 高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』を読みました。

壊れた脳と生きる ――高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援 (ちくまプリマー新書)

 

 興味深い内容でした。医療従事者でもなければ、例えば脳梗塞脳卒中の後遺症による(つまり筆者の鈴木大介氏のような発症例)高次脳機能障害を患う知り合いがいるわけでもない。たまたま手に取ってみたわけですけれど、この障害に対して何も知識が無かったためとても勉強になる本でした。多くの人が読むべき本ではなかろうか…と思います。実際、高次脳機能障害と向き合っている人の話は説得力がありますし、それを専門家である鈴木匡子先生が解きほぐしていくスタイルはすごくわかりやすかった。

 この本の中で繰り返し取り上げられていくのが、患者さんのお困りごとを医療従事者がなかなか汲み取れない現実。スーツを仕立てるように、家をリフォームしていくように、一人一人の患者さんによって症状の種類も重さも、それに関する困りごとも違うのだということを理解しておくことはすごく大切なことだと感じました。というのも、高次脳機能障害と一言で言っても、その人の病前の様子や、発症した箇所(右脳なのか左脳なのか)でまったく別の支援が必要になってくるからです。

 特に興味深かったのは、その人の病前にできていたことを把握すること。病前にできていたことが一般的な水準より高い場合、発症後のリハビリテストも容易にクリアしてしまうことがある、と。その状態でいざ生活をしてみると、なかなかうまくいかないというケースもあって困るという事例。患者さん本人が説明することはすごく難しいから、親しい人たちがお医者さんとコミュニケーションをとることが必要なのだろうと思いました。

 いざ自分が高次脳機能障害を患う場合でも、この障害の基礎的な知識があるかないかで心持ちも変わるだろうと思います。そういう意味で、職種に限らず多くの人が読んでいい本だと思いました。