8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

恩田陸『夢違』感想

 恩田陸の『夢違』を読みました。

夢違 (角川文庫)

 中学高校の時に読んだと記憶しています。久々に読んでみました。

 「あれは何だったの?」

 恩田陸作品を読んでいると、しばしぶち当たる難問です。

 私は恩田陸作品が好きですが、その良さを、登場人物の聡明さとお喋り度の高さ、読んでいてしっくりくる文体(私にとっては読みやすいのです)に見出していて、「あれは何?」の謎の全容が必ずしも明かされなくてもいいや、という感じです。ただ散りばめられた謎すべて明らかにしたいという人にとっては、もしかしたらモヤモヤする作品もあるのかもしれないなあ、というのはわかります。

 が、考えてみると、すべてが明るみになることってあるのかしら?と思うのです。私たちの日常はわかりやすい謎があるわけではありませんが、日々は妥協の連続です。よくわからないまま月日は流れていくのではないかしら。すべての謎に対する回答を用意しなければならないのかしら。むしろ『夢違』の怖さは、このわからなさにあったのではないか。そう考えると、読み終わってもモヤモヤした状態は『夢違』という作品においては、なんというか、説得力がある気がします。

 そう、『夢違』は読んでいてとても怖かったです。ホラー小説は読まないですが、ただ文字を追っているだけなのにこんなに怖いなんて。ましてや、夜、眠る前に読みだしてしまったからなおさら始末に負えません。その日は夢を見なくて(覚えてなくて)良かったです。

 SFの要素もホラーの要素も混ざったエンタメ小説だなと思います。恩田さんはジャンル問わず様々な作品をよく書くなあ…。すごい。