8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

アガサ・クリスティー『三幕の殺人』感想

 アガサ・クリスティー『三幕の殺人』を読みました。

三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 犯人については言及しないけれど、動機に関する感想を書くので各自回れ右お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実際に起こった事件に対するコメントで「誰でもよかったという動機は、ある意味で二重の殺人であると言える。つまり被害者の固有性を剥奪し記号に置き換える行為なのだ」みたいなものがあったような、なかったような、ただそのコメントは今も私の中に強く残っていて、この『三幕の殺人』はまさにそういう事件だったと言える。

 己の願望に対する執着と、それを邪魔する障害に対する無慈悲な仕打ち。なかなか悪辣な犯人だった。そして最後のポアロのウィットに富んだ台詞も見事。にしても早川書房の文庫本の新装版の表紙はどの作品も本当に見事で惚れ惚れしてしまう。表紙で切り取られたシーン(モチーフ、アイテム)がいつ登場するのかと楽しみに読むのもまた醍醐味。