8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

人の本性/アガサ・クリスティー『死が最後にやってくる』

 アガサ・クリスティー『死が最後にやってくる』を読みました。

 

 

 思えばクリスティーの小説をきちんと読んだのはこれが初めてかもしれない。タイトルにそそられて手に取りました。古代エジプトを舞台にしたということで珍しいスタイルではあると思うのですが、楽しく読めました。

  人の本性について考えさせられます。この話では「一見○○な人が実は△△で」というのがポイントなのですが、「○○だけと△△のように振舞う」という切り替えといいますが、選択といいますか、そういうのって本人も無自覚に行っているという体裁で書かれているのが面白いと感じました。気が弱く臆病者のようだけれど、薄皮一枚剥がせばその下からは狡猾で野心家なところが見られる、みたいな。でもそれは本人が戦略の一つとして自覚的に皮を被っているかというと、そうでもなさそうなんですよね…。

 私はこの本を読みながら、自分の本質的なところを見ないのは良くないことじゃないかなと思いました。それが悪だと言いたいわけではなく、良いところ悪いところわかってないと対処できないと思うので。

 レニセンブやホリ、エサおばあ様の聡明さが目立つ作品でもありました。最後の展開はわかっていたことではあったので読みながらニコニコしてしまいました。随分犠牲を払ったけれども。そしてあの結末後、インホテプ一家はどうなるかということを考えると、なかなか険しい道のりなのだろうなとも思いました。