8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

千早茜『人形たちの白昼夢』感想

千早茜『人形たちの白昼夢』を読みました。 千早さんは確か食べることを取り上げたエッセイも書いているし、イメージは「食べることが好きな人」なのだけれど、この人の書く「食べる」が好きだなと思う。ということで、好きな話は「スヴニール」一択。 スヴ…

アガサ・クリスティー『魔術の殺人』感想

アガサ・クリスティーの『魔術の殺人』を読みました。 今回はミス・マープルの元同窓であるキャリィ・ルイス・セロゴールドに参りました、という作品。なんだろう、彼女の人物描写、どこか既視感…と思ったら、小野不由美「十二国記」シリーズの采王・黄姑で…

宮部みゆき『英雄の書』感想

宮部みゆきの『英雄の書』を読みました。 とても好きな作品でして、定期的に読みたくなります。 物語を綴る者の業や、「英雄」と呼ばれる存在の光と影、「英雄」を体現したくなる人間の性について読みながら考えるのでした。 (以下ネタバレ) 友理子、いや…

デイヴィッド・ミッチェル『ボーン・クロックス』感想

デイヴィッド・ミッチェル『ボーン・クロックス』を読みました。 まず言っていい? この本は、私的ブックランキング2021年のトップ10に入ります!!!ぱちぱちぱち(日本では2020年刊行だけども) めっちゃ面白かった。本当に面白かった。長かったけど、夢中…

『アンデルセン童話集 上』感想

ハリー・クラーク絵『アンデルセン童話集 上』(荒俣弘訳)を読みました。 私は『雪の女王』が読みたく、手を取りました。 ほくち箱 しょっぱなから結構ブラック。魔法使いのおばあさんから主人公の兵隊がほくち箱を奪うのだけれど、魔女の首をバスッと切断し…

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』感想

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』を読みました。 私はタイトルを誤解した状態でこの本を手に取りました。 人間は「急に具合が悪くなる」ことがあります。それはいわゆる「急変」と呼ばれる、生死にかかわる体調の急激なる悪化ではなく、どちらか…

『更級日記』感想

原岡文子訳注『更級日記』を読みました。 『更級日記』と言えば、物語に憧れる地方の少女の熱量が仏に祈るほどのもの、というぐらいのイメージ。最後まで通して読むと、それだけではない、一人の女性の人生に起こる瞬間の美しさや諦観が滲む作品でした。通し…

芥川龍之介『藪の中・将軍』感想

芥川龍之介『藪の中・将軍』を読みました。 芥川龍之介、なんだろう、読みやすい。 特にお気に入りなのは『山鴫』『母』だろうか。 今年SFを読む機会があった。SFはScience Fictionの略称で、科学的な空想に基づいたフィクションなのだけれど、芥川を読むと…

窪美澄『じっと手を見る』感想

窪美澄『じっと手を見る』を読みました。 それぞれの登場人物による一人称視点の独特の語り(一人称視点はどうしても登場人物の内面により近い語りになる)とむせかえる生の気配と、富士の麓に広がる樹海と介護施設から漂う死の気配に酔いそうになった。読ん…