8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』感想

荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』を読みました。 ううむ。面白かった。ちゃんと面白かったのに今まで読んでいなかったのは一体なぜなのだろう。「すべてを読んだ」なんて大言壮語するつもりはないが(有名なファンタジーを網羅してるとも言い…

陳浩基『ディオゲネス変奏曲』感想

陳浩基『ディオゲネス変奏曲』を読みました。 まず言っていいか(もしかしたら他のところで言っているかもしれんが)。 早川書房の細長いタイプの本が私は好きだ!!! 本当に好きだよ~~~このサイズ感が憎すぎる。奥付のところの記載によれば この本の型…

長谷部千彩『私が好きなあなたの匂い』感想

長谷部千彩『私が好きなあなたの匂い』を読みました。 長谷部さんの『メモランダム』の雰囲気が好きで、手に取った二冊目の本です。雑誌に連載されていた短い物語がたくさん集まった本です。そういう性質上、細かく何日もかけて読むのがいいのではないかと思…

C・S・ルイス『魔術師のおい ナルニア国物語 1』感想

C・S・ルイスの『魔術師のおい ナルニア国物語 1』を読みました。 ナルニア国物語は『ライオンと魔女』で挫折している人間です。名作ファンタジーであるのは聞き及んでいるのに、なんで面白く感じられないのだろう(それは私の欠陥なのだろうか)と思うぐら…

『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ』感想

『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ』を読みました。 ああ、なるほど。この手があったか。私にもできるかしら? 試しにやってみようか?(p.14) 書店で見かけて気になっていた本でした。まずタイトルが素晴らしいなと…

最果タヒ『恋人たちはせーので光る』

最果タヒ『恋人たちはせーので光る』を読みました。 詩の読み方がわからない。 詩 ①(文学の一形態として)自然・人情の美しさ、人生の哀歓などを語りかけるように、また社会への憤りを訴えるべく、あるいはまた、幻想の世界を具現するかのように、選び抜か…

クラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』

クラフト・エヴィング商會の『おかしな本棚』を読みました。 本を読む。それは個人的なこと。誰かが本を読む。それは怖いこと。 そんな言葉が思い浮かんだ。 WISDOM 知恵授けるTeach1見境いない善悪のBig Bangつまりそれは小さな教室から無限広がる叡智の羅…

アガサ・クリスティー『雲をつかむ死』感想

アガサ・クリスティーの『雲をつかむ死』を読みました。 クリスティーは面白くない作品があまり無いなあ、、、と読んでいて本当に思います。 この『雲をつかむ死』も然りで、ミステリーとして先が気になるという面白さもさることながら、人物描写が見事で。…

江國香織『ウエハースの椅子』感想

江國香織『ウエハースの椅子』を読みました。 冒頭で私はこの本のことを好きになった。 かつて、私は子供で、子供というものがおそらくみんなそうであるように、絶望していた。絶望は永遠の状態として、ただそこにあった。そもそものはじめから。 江國香織『…

江國香織『はだかんぼうたち』感想

江國香織『はだかんぼうたち』を読みました。 (私は単行本の方を読みましたが、文庫の表紙かわええ…。) さておき、読みました。着々と江國作品を読んでいっております。 『はだかんぼうたち』は比較的狭いコミュニティの人間関係がかなり複雑で、唐突に登…

アガサ・クリスティー『スリーピング・マーダー』感想

アガサ・クリスティーの『スリーピング・マーダー』を読みました。 ※ネタバレありです 最初に言っておきたいのですが、新婚グエンダの旦那さんが犯人じゃなくて良かった!本当に良かった!最悪、それだけ言えればいいです!でも感想を続けます。 やっぱり犯…

千早茜『正しい女たち』感想

千早茜『正しい女たち』を読みました。 様々な女性たちが登場する短編集です。 読み終わって、タイトルの『正しい女たち』について考えていたのですが、何において正しいのだろう? と、ふと思ったのでした。私の思い付きは「自分の信念に」正しい女たち、で…

平野啓一郎『マチネの終わりに』感想

平野啓一郎『マチネの終わり』を読みました。 ネタバレになると思いますので読もうと思っている人は注意ください。 私は元来、勘違いや誤解をベースとした物語が苦手です。コントなどお笑いのネタでもあることですし、ドラマやアニメなど創作にも登場すると…

恩田陸『スキマワラシ』感想

恩田陸『スキマワラシ』を読みました。 作中の季節が夏ってわけではないのだけれど、これは夏に読みたいなあ…と思わせる鮮やかな青と涼しげな少女の表紙が印象的。 気になって書店でぺらぺらとめくった時に抱いた印象はそれとして、読み進めるうちに少しずつ…

江國香織『東京タワー』感想

江國香織『東京タワー』を読みました。 開架で何度も見かけそのたびにぱらぱらとめくり結局棚に戻していたこの本を読もうと思ったのは、何度目かの立ち読みでたまたま読んだシーンがものすごく静かだったからだ。静かな小説を読みたかったので、丁度いいと思…

【雑記】読書の秋というけれど本当か

2013年から読書メーターで記録をとっている。 そして力技で読書メーターで記録していたものをExcelに落としこんだのが昨年。以来、読書メーターだけでなくExcelでも簡単に記録をつけている。その理由は単純にデータとして処理したかったからだ。 で、そうい…

アガサ・クリスティー『白昼の悪魔』感想

アガサ・クリスティーの『白昼の悪魔』を読みました。 クリスティーの「やり口」はわかっているんだ。まだまだ読み切れてないがそれでもクリスティー作品を読んできたのだから。でも、犯人がわからない。当たらない。結末に驚く。読者としては「良い」読者か…

恩田陸『夢違』感想

恩田陸の『夢違』を読みました。 中学高校の時に読んだと記憶しています。久々に読んでみました。 「あれは何だったの?」 恩田陸作品を読んでいると、しばしぶち当たる難問です。 私は恩田陸作品が好きですが、その良さを、登場人物の聡明さとお喋り度の高…

江國香織『ホリー・ガーデン』感想

江國香織『ホリー・ガーデン』を再読しました。 今年の三月ぐらいに図書館で借りてもう一度読みたいなと思ったので文庫本で購入後、読み直しました。 一つひとつの章が短いので、一章読むごとに「ふう」と息を吐きだし、茶でも飲み、再び「よいしょ」と読み…

江國香織『彼女たちの場合は』感想

江國香織さんの『彼女たちの場合は』を読みました。 面白かったな~。なんだろう、特別何かが起こるわけではないのだけれど、常に何かが起こっている小説だなと思いました。もちろん起こった出来事から驚くべき出来事をピックアップすることはできるのだけれ…

アガサ・クリスティー『終りなき世に生れつく』

アガサ・クリスティーの『終りなき世に生れつく』を読みました。 人が死ぬことはわかっている。が、なかなか死なない。その「なかなか死なない(≒ 事件が起きない)」がポイントだったのだなと気が付いたのは読み終わった後。この本を読んだことがない人が、…

宮部みゆき『悲嘆の門』感想

宮部みゆきの『悲嘆の門』を読みました。 再読。『英雄の書』と繋がっている世界観になります。友理子も登場します。 宮部先生の作品は、物語の背景にある社会をしっかりと書き込むところに一つ特徴があると思っていて、人間の感情をどろどろに煮詰めて出来…

アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』感想

アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を読みました。 正確にはアガサ・クリスティーとは別の名義で公開された作品らしいので「アガサ・クリスティーの」と言うのは憚られる気もしますが、とにかく読みました。 この本を読み終わって最初に感じたのは…

『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』感想

アマル・エル=モフタール、マックス・グラッドストーンの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』を読みました。 いや~~~~~。面白かった。とても刺激的でした。 タイムスリップしあらゆる領域の出来事を自分たちの陣営にとって都合がいいように改変し…

恩田陸『光の帝国 常野物語』感想

恩田陸『光の帝国』を読みました。 おそらく今までの人生で一番著作を読んだ作家を挙げるならそれは恩田陸。今回は常野シリーズから『光の帝国』を読みました。先日『エンド・ゲーム』を読みましたね。この本に収録されている短編「オセロ・ゲーム」はその前…

鈴木大介・鈴木匡子『壊れた脳と生きる: 高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』感想

鈴木大介・鈴木匡子『壊れた脳と生きる: 高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』を読みました。 興味深い内容でした。医療従事者でもなければ、例えば脳梗塞や脳卒中の後遺症による(つまり筆者の鈴木大介氏のような発症例)高次脳機能障害を患う知…

エイモア・トールズ『モスクワの伯爵』感想

エイモア・トールズの『モスクワの伯爵』を読みました。 革命後、モスクワのメトロポール・ホテルに軟禁された伯爵の物語。ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っており、残りの人生をホテルの屋根裏で過ごさなければならないという状況をいかに乗りこなすか、伯爵…

千早茜『人形たちの白昼夢』感想

千早茜『人形たちの白昼夢』を読みました。 千早さんは確か食べることを取り上げたエッセイも書いているし、イメージは「食べることが好きな人」なのだけれど、この人の書く「食べる」が好きだなと思う。ということで、好きな話は「スヴニール」一択。 スヴ…

アガサ・クリスティー『魔術の殺人』感想

アガサ・クリスティーの『魔術の殺人』を読みました。 今回はミス・マープルの元同窓であるキャリィ・ルイス・セロゴールドに参りました、という作品。なんだろう、彼女の人物描写、どこか既視感…と思ったら、小野不由美「十二国記」シリーズの采王・黄姑で…

宮部みゆき『英雄の書』感想

宮部みゆきの『英雄の書』を読みました。 とても好きな作品でして、定期的に読みたくなります。 物語を綴る者の業や、「英雄」と呼ばれる存在の光と影、「英雄」を体現したくなる人間の性について読みながら考えるのでした。 (以下ネタバレ) 友理子、いや…