8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

デイヴィッド・ミッチェル『ボーン・クロックス』感想

デイヴィッド・ミッチェル『ボーン・クロックス』を読みました。 まず言っていい? この本は、私的ブックランキング2021年のトップ10に入ります!!!ぱちぱちぱち(日本では2020年刊行だけども) めっちゃ面白かった。本当に面白かった。長かったけど、夢中…

『アンデルセン童話集 上』感想

ハリー・クラーク絵『アンデルセン童話集 上』(荒俣弘訳)を読みました。 私は『雪の女王』が読みたく、手を取りました。 ほくち箱 しょっぱなから結構ブラック。魔法使いのおばあさんから主人公の兵隊がほくち箱を奪うのだけれど、魔女の首をバスッと切断し…

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』感想

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』を読みました。 私はタイトルを誤解した状態でこの本を手に取りました。 人間は「急に具合が悪くなる」ことがあります。それはいわゆる「急変」と呼ばれる、生死にかかわる体調の急激なる悪化ではなく、どちらか…

『更級日記』感想

原岡文子訳注『更級日記』を読みました。 『更級日記』と言えば、物語に憧れる地方の少女の熱量が仏に祈るほどのもの、というぐらいのイメージ。最後まで通して読むと、それだけではない、一人の女性の人生に起こる瞬間の美しさや諦観が滲む作品でした。通し…

芥川龍之介『藪の中・将軍』感想

芥川龍之介『藪の中・将軍』を読みました。 芥川龍之介、なんだろう、読みやすい。 特にお気に入りなのは『山鴫』『母』だろうか。 今年SFを読む機会があった。SFはScience Fictionの略称で、科学的な空想に基づいたフィクションなのだけれど、芥川を読むと…

窪美澄『じっと手を見る』感想

窪美澄『じっと手を見る』を読みました。 それぞれの登場人物による一人称視点の独特の語り(一人称視点はどうしても登場人物の内面により近い語りになる)とむせかえる生の気配と、富士の麓に広がる樹海と介護施設から漂う死の気配に酔いそうになった。読ん…

小川糸『卵を買いに』

小川糸『卵を買いに』を読みました。 エッセイを読むとき、私は他人の考えを借りる気持ちで読む。知らない場所、知らない食べ物、知らない景色、考えても見なかったこと、他人の考え。エッセイを読むことで多少なりともインプットできたと思う。 他の人の考…

アガサ・クリスティー『邪悪の家』感想

アガサ・クリスティーの『邪悪の家』を読みました。 「邪悪な」家ではなく、「邪悪の」家であるところが面白いと思いました。この家に愛着を持つニック、薄気味悪さを感じている使用人。なんでしょう、何かを所有することに執着する人の業、という気もしまし…

太宰治『斜陽』感想

太宰治の『斜陽』を読みました。 太宰治は『人間失格』に次いで二冊目。いつも芥川龍之介と混同している。でも芥川と太宰って作風もテーマも違うのねと段々気づき始めている。 この小説で「斜陽族」という言葉が生まれたほど。意味としては「急激な社会変動…

エーリッヒ・フロム『生きるということ 新装版』感想

エーリッヒ・フロム『生きるということ 新装版』を読みました。 『愛するということ』とセットで本屋に平積みになっていた気がします。。そして『愛するということ』の方が平積みの山は低め(つまり捌けている?)印象。あくまで私の印象です。いずれは『愛…

恩田陸『エンド・ゲーム』感想

恩田陸『エンド・ゲーム』を読みました。 恩田陸作品の中でも「常野シリーズ」と呼ばれている作品群の1つです。読んだことはあるけれど、再読はあまりしてないシリーズ。特に深く考えてはこなかったけれど、どうしてなのだろう。嫌いなわけでも苦手なわけで…

アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』感想

アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』を読みました。 個人的クリスティー作品TOP5に入りそうな作品です。とにかく登場人物が多いのですが、多少わからなくても読み進めることをおすすめします。そのうち嫌でも覚えますから。 甥とか姪とか従姉妹とか、この…

江國香織『犬とハモニカ』感想

江國香織『犬とハモニカ』を読みました。 いいですね、という感じ。昨年から随分と江國香織作品を読んできたなあと感慨深い気持ちになります。収録されている『アレンテージョ』は別のアンソロジーで読んだことがあって懐かしくなりました。車を運転している…

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』感想

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』を読みました。 積読していたのですが読み終えることができました(積読期間1年強)。 なんというか、これは私の人生観になるのかもしれないですが、人という生き物は一生を通して自身の哲学を構築していく、という考え…

宮部みゆき『とり残されて』感想

宮部みゆきさんの『とり残されて』を読みました。 いいですね、宮部さんの話は。どれも良質な作品でした。 宮部作品の主人公は、芯が強い。別で言い換えると、「頑固」と表現することもできて、そこに「妄執」みたいなものがプラスされると後は破滅への道を…

堀江敏幸編『記憶に残っていること』感想

『記憶に残っていること』を読みました。 新潮クレスト・ブックスから堀江敏幸さんが選りすぐった短編が収められています。どれも素晴らしい短編です。私はこの中に収められているラヒリの短編の雰囲気が好きで手に取りました。なんでしょう「この空気感が好…

江國香織『なつのひかり』感想

江國香織さんの『なつのひかり』を読みました。 小説を読むのは、何か目的があるわけではない(この場合の「目的」とは何が当たるだろう、語彙力強化とか、知識収集とか、そういうの?)。楽しいからでもない。私にとってはただ習慣なだけであり、プラスして…

アガサ・クリスティー『死との約束』感想

アガサ・クリスティーの『死との約束』を読みました。 先日、三谷幸喜の脚本でドラマ化された作品。面白かったのでぜひ原作を読みたいと思い手に取りました。 こちらも面白かったですね。クリスティーは人間の集団における感情の機微を描くのが本当にうまい…

島本理生『匿名者のためのスピカ』感想

島本理生さんの『匿名者のためのスピカ』を読みました。 私はこの本を読んで「七澤君!!!」となりました。案の定女性読者に人気の登場人物らしい。主人公の笠井君よりよほど「七澤君」だろう。でも七澤君は主人公ではありえない。直感的に、それは間違いが…

千早茜『森の家』感想

千早茜さんの『森の家』を読みました。 小説に登場する人物たちを嫌いになることはあるか。 そう訊かれたら、私は「限りなくゼロに近いNo」と答えると思う。つまり、よほどのことが無い限り、嫌いになることは無い。 ただ、強いネガティブな感情を抱くことは…

恩田陸『灰の劇場』感想

恩田陸さんの『灰の劇場』を読みました。 感想にするのが難しいと感じます。うまく言語化できていないです。二回読んだ今もそれは変わらない。もしかしたら「感想としてまとめない」というのが感想になるのかもしれない。恩田作品だと『中庭の出来事』に近い…

アリ・スミス『ホテルワールド』感想

アリ・スミスの『ホテルワールド』を読みました。 難しかったし、読むのに苦労した、というのが最初の感想。でもそれが悪くない感じ。むしろこの難解さ、複雑さがこの本の魅力だと言ってしまってもいいのではないか。5人の登場人物たちの混沌とした思考。連…

江國香織『号泣する準備はできていた』感想

江國香織さんの『号泣する準備はできていた』を読みました。 1年ぐらい前に実は読んでいたのだけれど、読んだことを忘れたまま読み始め「ああ、なんかこの話知っているぞ」とじわじわと思い出しながら最後まで読み切りました。いいですね。この短編集はあと…

アガサ・クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』感想

アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』を読みました。 ※ちなみに私は田村隆一訳を読んでおります。 ※そしてネタばれを含んでいるのでご注意願います。 読みました。面白かったな。クリスティー、とりあえず10冊以上は読んだのだからいい加減犯人が…

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』感想

アガサ・クリスティーの『五匹の子豚』を読みました。 今から16年前の私って、何歳だ? そう考えたとき、この物語のすごさを再認識する。私は16年前の私と出来事を思い出すことができるかしら。 とても面白かったです。傑作だとかそういう話を聞くのもとても…

角田光代『彼女のこんだて帖』感想

角田光代さんの『彼女のこんだて帖』を読みました。 いいですね。食べることがある。ただそれだけ。上手とか下手とかそんなこと、どうだっていい。人が食べることにハッとしたきらめき抱いた瞬間を捉えた作品だと思います。毎日作る必要なんてない。でも、ず…

江國香織『真昼なのに昏い部屋』感想

江國香織さんの『真昼なのに昏い部屋』を読みました。 再読なので過去の私はなんて言っていたのかしら?と思って過去記事を見てみたのですが、どうやら感想は書いていなかったよう。残念。読みました。 面白いですねえ。短い話でもあるのであっという間に読…

町屋良平『愛が嫌い』感想

町屋良平さんの『愛が嫌い』を読みました。 『しずけさ』『愛が嫌い』『生きるからだ』の三篇からなる作品です。 町屋さんの文体に慣れてきた感覚があります。町屋さんの作品はとても静かで混沌としているような印象です。静かで混沌って矛盾しているようで…

コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集』感想

コナン・ドイルの『まだらの紐 ドイル傑作集』を読みました。 「まだらの紐」含むドイルの短編が収録されています。ホームズが主人公のものもありますが、ホームズが出てこない短編もあってそれが面白いと思いました。特にお気に入りなのは、最後の「ジェレ…

恩田陸『土曜日は灰色の馬』感想

恩田陸さんの『土曜日は灰色の馬』を読みました。 感想がひとつしかない。 「インプットがすげえ…」 ただそればかり。インプット量がすごい方なのだろうなと思います。またそれぞれのインプットに対する解釈も独自のもので、あの恩田作品はこれら数多の解釈…