千早茜『森の家』感想
千早茜さんの『森の家』を読みました。
小説に登場する人物たちを嫌いになることはあるか。
そう訊かれたら、私は「限りなくゼロに近いNo」と答えると思う。つまり、よほどのことが無い限り、嫌いになることは無い。
ただ、強いネガティブな感情を抱くことはある。具体的には「みりさんみたいな人が近くにいたら、わたしだったら腹が立つだろうな」と思った。それは苛立ちに近い感情だと思う。
それでも私がみりさんのことを嫌いにならないのは、「え、私、他人のことを嫌いにならない善良な人間なんです」と言いたいってのもあると思うし、別の理由もある。
みりさん視点で進められる章「水の音」や、彼女と暮らす(暮らしたことがある)まりもくんや佐藤さん視点で描かれる「みりさん」像に触れ、人間というのは視点によって見え方はまったく変わるということを改めて感じたからだ。
多分腹が立つ人間であっても、小説で描かれてしまえば許せてしまうのかもしれない。政治家だとか仕事で関わるいけ好かない上司とか実の父親だとか。
そんなことを思いました。
「なんだこの三人、揃いも揃ってどうしようもない」という感想は、小説においては的外れだと思っていて、そのどうしようもなさに形を与えるのが小説だろう?って思ってます。そして彼ら彼女らの持つ「どうしようもなさ」は決して他人事ではないんです。