8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

江國香織『真昼なのに昏い部屋』感想

 江國香織さんの『真昼なのに昏い部屋』を読みました。

真昼なのに昏い部屋 (講談社文庫)

 

 再読なので過去の私はなんて言っていたのかしら?と思って過去記事を見てみたのですが、どうやら感想は書いていなかったよう。残念。読みました。

 

 面白いですねえ。短い話でもあるのであっという間に読めてしまいます。するすると。これは他の人はどんな感想を持つのだろうか?と知りたくなる話でもあります。一方で、私がこの本を読んでいることを知られたくない。そういう気持ちも湧いてくるからとっても面白いです。文体がまどろっこしいと思うのか、うざったいと思うのか。これは悲劇だと受け取るのか、倫理観の欠如をあげつらったりするのかしら?よくわからないな。

 私はどう読んだ?

 そうだな。例えばジョーンズさんが気に入りません。美弥子さんとジョーンズさんが共有する世界がとても美しく鮮やかなものであることはわかります。そこがこの小説の中でもとても好きな部分の一つです。しかし一方で、ジョーンズさんは公平すぎる。公平すぎる?クリーンすぎる?違うな。ジョーンズさんの皮膚は透明なガラスのような薄いもので覆われているのではないか?そういう無責任さというか、世界との距離感を感じるのです。そこが私は気に入りません。でもそれは世界の外に出てしまったからなのかな。私が気に入らない部分は、世界の内か外かの問題ではない気もするのですが…。まあ今後の宿題にします。

 美弥子さんとジョーンズさんは、この後もずっと長く関係性は続くのではなかろうかと思います。ジョーンズさんが見る美弥子さんのイメージが多少変わっても、二人は同じ層で物事の美しさを見いだせる気がするから(価値観が合うと言うのかもしれない)。

 浩さんとのディスコミュニケーションは面白かったのですがイライラしました。どうなのだろう。私が浩さんになる可能性はないのかしら。あるいは、浩さん目線で美弥子さんとのコミュニケーションを考えたときに、どう見えているのだろう。「私に執着しなくなったのね」それは、関心を寄せなくなったと同義なのだろうか。だとすれば、浩さんは、美弥子さんを自分の手中に収めた時から執着しなくなったのでは?とか。

 人って人の話を聞けてないものなのだろうなあということを、美弥子さんと浩さんとの会話から考えました。その些細なズレは美弥子さんとジョーンズさんとのやりとりでもありましたし。そう考えると、美弥子さんって元々めちゃめちゃ閉じられている人なのでは?とも思いました。他人に期待しない強さというか。そういうところ、好きだな。

 そう、多分この物語の特徴は、登場人物たちが依存してないところです。