宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』を読みました。
私はタイトルを誤解した状態でこの本を手に取りました。
人間は「急に具合が悪くなる」ことがあります。それはいわゆる「急変」と呼ばれる、生死にかかわる体調の急激なる悪化ではなく、どちらかと言えば精神的に追い込まれ急に体調が悪くなることがあるのではないか、と。それはどういう現象なのか、私は知りたくて手に取りました。蓋を開けてみれば、そこにあったのは私が想像していた「急に具合が悪くなる」ではなく、生きるとは何かという命題に対する宮野さんと磯野さんの全力のキャッチボール(という名の往復書簡)でした。まず、この偶然性に感謝したいです。
印象的だったのは「ガン患者100%の状態に陥りたくない」というような話。ガン患者であることが固定化され、人と人とのコミュニケーションが硬直化していくというくだり。ガン患者の語りが、話し言葉ではなく書き言葉に寄っていくというのも印象的でした。自分だったらどう振る舞うだろうということを考えました。
あとはラインを描く話。ティム・インゴルドの『ラインズ』は読まないとなあ…。書店で平積みになっていて気になっていた本ではあったのですが。徒歩旅行と輸送の対比はぜひ読んでみたい。
この本を読めてよかったと思います。