8月2日の書庫

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宮部みゆき『とり残されて』感想

 宮部みゆきさんの『とり残されて』を読みました。

とり残されて (文春文庫)

 

 いいですね、宮部さんの話は。どれも良質な作品でした。

 宮部作品の主人公は、芯が強い。別で言い換えると、「頑固」と表現することもできて、そこに「妄執」みたいなものがプラスされると後は破滅への道を進むだけ、というような場合もある。その場合は行くところまで行くしかない。作品を読んでいると「止まるまで進むのみ」という言葉がよく思い浮かびます。

 「止まらない」ってどういうことだろうと思います。

 この世における惨状は、伏流水のように潜んでいた何かが突如噴出したような、あるいは、本当に突発的なタイプと、じっくりコトコト煮え続けようやく日の目を見る「満を持して」タイプがあるのかなあと思っていて、どうして止まらなかったんだろう、と思ってしまいます。誰か止められなかったのかな。途中でいくつもの検問がありバリケードがあり、止まるタイミングはあったはずなのにそれでも進んでしまった。そこから私たちは何か教訓を得られるはずだ、と。

 行くところまで行くしかないのかな。途中で止まれば、その地点がその人にとっての「行けるところまで」だったのかな。止められないのかな。

 私は各短編を読みながら、それぞれが止まった理由を意識しながら読みました。もちろん、「行けるところまで行く」タイプの話ばかりではありませんでしたが。本人が死ぬまでか、目的を達成するか、誰かが死んでますね。途中で引き返せるなら、最初から物語は生まれないのかな…(悶々)。

 

 ということで、面白かったです。私が好きなのは何だろう『いつも二人で』かな。