8月2日の書庫

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エイモア・トールズ『モスクワの伯爵』感想

 エイモア・トールズの『モスクワの伯爵』を読みました。

モスクワの伯爵

 

 革命後、モスクワのメトロポール・ホテルに軟禁された伯爵の物語。ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っており、残りの人生をホテルの屋根裏で過ごさなければならないという状況をいかに乗りこなすか、伯爵のその生き様はアイデアと発見に満ちていてとても面白かったです。「人生の境遇の奴隷になるな」という言葉がピーンと一本通った物語だったと思います。そこそこ長い話ですが、短く区切られているのでそれぞれのペースで読めそうという点もよかった。ロシア史にあかるくないので、勉強していればもっと楽しめたんだろうなという余地があったのもそれまた良き。総料理長のエミール、マネジャーのアンドレイとのロシア版『三匹のおっさん』か?というトリオも良くて、この話、アニメ化したらいい画撮れるのでは?と思ったりして。このおじ様たち、ぜひ映像で見てみたい。

 

 人生の境遇の奴隷になるな。伯爵はこの言葉を体現するように生きたわけだけれども(そして私は感動した)その心構えを持つことと、境遇の圧に打ち勝てるかどうかってのは別の話だなとも思いました。個人の機転や能力ではどうしようもできない問題もありますから。

 

 いずれにせよ、楽しい読書時間を送ることができて良かったです。本屋に平積みにされていて気になっていたものだから読めて良かった。