8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

クラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』

 クラフト・エヴィング商會の『おかしな本棚』を読みました。

おかしな本棚

 

 本を読む。それは個人的なこと。誰かが本を読む。それは怖いこと。

 そんな言葉が思い浮かんだ。

WISDOM 知恵授けるTeach1
見境いない善悪のBig Bang
つまりそれは小さな教室から
無限広がる叡智の羅針盤

『Crush Your Mic -Rule the Stage track.3』

 と、これは私がヒプマイ(詳しくは調べて)の私は見てない舞台の、テーマソング(だと思う)なのだけど、この曲が最近の気に入りで、その中の一説である。この歌詞と少しリンクしたような気がした。

 つまり、人それぞれの身体の中には【小宇宙】がある。私には窺い知ることのできない広大な宇宙が。本を読むことはその宇宙を拡張させる。私は他者が何を考えているのか恐れている。他者がどんな本を読むのか。それも恐れている。そして本棚は、広大な宇宙のほんの端っこが垣間見える空間なのかもしれないな、と思ったのだった。

 ということで、この本の冒頭に「これは本棚の本です」とある通り、この本は本棚の本である。金曜日の夜の、波打ち際の、いつの日かの、うるわしい、旅する、声が聞こえる、読めない、そういう本棚がたくさん登場する。正直な話、私は自分が読んできた本をこのように分類するほど自覚的な読書家ではないなと反省しきりであった。読んだ本を忘れてることすらあるというのに。それでも読んでいてとても面白かった。

 そういえば、読書歴を記録するサービスとして「ブクログ」や「読書メーター」があるが(私は読書メーター派)その中の機能に「本棚」というものがあるようで、それも思い出した。物理的に本棚を整備するのはスペースがどうしても必要だが、デジタルの空間においては作り放題だ、と。それでも質的な本棚、触れる本棚、そこにある本棚の情報量やら空気感はリアルの本棚でしか生み出せないのだろうなと思った。公共施設なんかの片隅にひっそりある生け花コーナー(有志の方が時々替えている)のように、どこかの片隅にひっそりと本棚があって、定期的に中身が変わる、なんてものがあったらいいのに。そういえば、私の自治体の図書館では定期的にテーマに沿った本を集めて本棚にまとめていたなあ、なんてことも思い出し、本棚をめぐる思索はどんどん広がっていくのであった。それこそ、拡張し続ける宇宙のように。